トヨタが奮闘する燃料電池は、再び脚光を浴びるのか:高根英幸 「クルマのミライ」(4/6 ページ)
トヨタのFCEV「MIRAI」の販売台数がいまひとつである。直近の販売台数を見ると、月に24台だ。このままでは「近未来のカーボンニュートラル」は絵に描いた餅で終わってしまいそうだが、業界ではどのような動きがあるのだろうか。取材して分かったことは……。
燃料電池の内部部品であるセパレーターを納入する部品メーカーには、トヨタMIRAIの燃料電池スタックも展示されていた。先代モデル用とはいえ、燃料電池スタックの仕組みや各セルの構造を見せるだけでなく、丁寧に説明まで加えられていた。そのあたりにも、これまでとは異なるトヨタの姿勢を感じた。
水素エンジンを開発中のベンチャーもいくつかあった。どれもユニークで、興味深いものだった。1つはディーゼルエンジンに点火プラグ機構を追加し、インジェクターを軽油用から水素用に変更して水素エンジン化したもので、ディーゼルエンジンと比べマイナス10%のトルク発生を目標として開発中だとか。
現在はテストベンチでエンジンを回してセッティングを煮詰めている段階で、実際にトラックに搭載して走行実験を行うのはこれからだが、今後の熟成が期待できる事業だ。
水素エンジンを開発中のベンチャー、i Laboのブースに展示されていた、ディーゼルエンジンをベースに火花点火式に改造して水素エンジン化するシリンダーヘッド(写真中央)。まだテストベンチ状態だが、エンジニアはガソリンとの混焼で水素を長年利用してきたという
もう1つは米国のベンチャーで、ディーゼルエンジンをベースに軽油のポスト噴射で種火を作り、そこに水素を噴射して燃やすという仕組みだ。これは、完全なカーボンニュートラルを実現するためには、軽油ではなくバイオ燃料や合成燃料を使用する必要はあるものの、ディーゼルエンジンの未来形として十分に可能性を感じさせる。
ディーゼルエンジンを熟知する技術者にとっては仕組みは容易に想像できるものだが、実際には負荷や回転数が変化するなか安定した燃焼を続けるのは難しい制御となりそうだ。
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