高級食パン「銀座に志かわ」社長に聞く勝算 ブームが終わっても生き残れるのか:米国に挑戦(2/4 ページ)
全国ブームの火付け役となった銀座に志かわは、2022年7月に米ロサンゼルスで海外一号店を出店した。デリバリーサービスを中心に事業を展開している。高級食パンビジネスでは、何が起こっているのか。銀座に志かわを展開する銀座仁志川の高橋仁志社長に聞いた。
店舗数の伸びは「参入障壁の低さ」
――銀座に志かわが開業した18年、高級食パンの店舗数は当時、全国でも300店舗くらいといわれていました。20年からコロナ禍に見舞われているにもかかわらず5年で3倍以上に増えた形になります。なぜここまで伸びたのでしょうか。
ブーム自体はコロナ禍以前から火が点いていたとは思うのですが、一番の理由は参入障壁の低さだと考えています。コロナによって外食産業は大きなダメージを受けました。ただ、その中で食パンは多くの日本人が家で毎日食べるものなので、需要はそう簡単にはなくなりません。
何より高級食パンに絞ることによって、一種類の商品でもビジネスを展開することが可能になります。もともとパン屋を手掛けていない企業でも新規参入しやすいんですよね。実際に乃が美さんを含め、現在は全国展開する高級食パンチェーンはベーカリー出身ではない企業が大半です。
その点、私はもともと、老舗ベーカリー「麻布十番モンタボー」としてスタートしています。ベーカリー業界に20年近く携わっています。
――高級食パンが一つの文化となって何か変わった点はありますか。
パン業界に入って20年近くになりますが、日本人の主食といえる「食パン」が贈答品にも使えるようになったのは大きいと思います。今までお中元などのギフトにパンを贈ろうとする人はいなかったのではないでしょうか。贈答品にも使えるパンという市場を新たに形成したわけです。ブランドがより大事になったと考えています。
――22年7月には日本の高級食パンチェーンとして初めて海外に進出。パン食の本場である米ロサンゼルスに店舗をオープンしました。なぜ米国に照準を合わせたのでしょうか。
海外に行ったことのある方なら分かると思うのですが、確かに欧米ではパンは主食ではあります。ただ、日本人になじみのある食パンが主食かというと、そうではないんですよね。フランスパンやクロワッサンといったタイプがどちらかといえば主流なのです。
四角い形をした角食パンは英国で生まれたもので、英国ではパンの上に山がついているタイプのものでした。この山型タイプの食パンも日本では広く売られています。これが米国に渡ったことで、店頭で縦に陳列して売りやすくするために、山が取れて日本で主流の形の角食パンになりました。
そういう意味では、(山が取れた)角食パンの発祥の地である米国で、品質で勝負したい狙いはあります。
――海外のパンは生で食べると固いものが多い印象です。米国の食パンは日本のものと比べて、どうなのでしょうか。
正直に言うと、乾燥したパサパサしたものばかりでおいしくない印象です。日本の食パンは柔らかくてもちもちした食パンが中心ですが、その中でも当社の食パンは上品な甘さと柔らかさに自信があります。勝算は十分にあります。
――日本の流行を好意的に受け止めてくれる中国や台湾、韓国などで展開する考えはなかったのですか。
中国、台湾、韓国などのアジア各国では日本の文化がすぐに浸透する地域で、そうした問い合わせも多くいただきました。ただ、当社の高級食パンで、海外で勝負するとなった際に、真っ先に出ていきたかったのが米国とフランスだったんです。
米国は角食パン発祥の地ですし、フランスは昔から今に至るまでパン食文化の最先進国です。こうしたパンの先進国で自分たちの腕試しをしたい思いは、創業の時から発言してきました。
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