高級食パン「銀座に志かわ」社長に聞く勝算 ブームが終わっても生き残れるのか:米国に挑戦(3/4 ページ)
全国ブームの火付け役となった銀座に志かわは、2022年7月に米ロサンゼルスで海外一号店を出店した。デリバリーサービスを中心に事業を展開している。高級食パンビジネスでは、何が起こっているのか。銀座に志かわを展開する銀座仁志川の高橋仁志社長に聞いた。
米国デリバリーの実態
――米国ではデリバリーサービスを中心にビジネスを展開しています。これはどういったサービスなのでしょうか。
米国では「Coco」という配達ロボットを使ったデリバリーも進めています。Cocoは道路の上を走るドローンのようなもので、遠隔操作によって動きます。配達可能な範囲は大体半径2マイル(約3.22キロメートル)で、商品が到着したら受け取り人が事前に送ったQRコードを照合することで、Cocoの荷台が開き荷物を取り出せる仕組みになっています。
ロサンゼルスにある「Colony」というピックアップ&デリバリー専門の商業施設の一画に出店したのですが、そこには30台ぐらいのCocoがあります。もちろんまだまだ人手を使った配達が主ではありますが、今後は無人の配達の仕組みも広がっていくはずです。そういう点も米国という最先端の場所で学んでいきたいと考えています。
――国内でもパン店の車が住宅街を回る移動販売ビジネスがあったと思いますが、今の国内のパンデリバリーの事情はどのような状況ですか。
国内の実験ではUberも使って配達したりもしました。ただ高級食パンでは、880円の食パンに配達手数料が上乗せされてしまうと、値段が一気に1000円を超えてしまうんですね。1年ほどかけて実証実験をしたのですが、なかなか活路が見いだせないでいます。
――高級食パンをUberで頼んで買うかという問題になるわけですね。贈答用にも使えるパンだからこそ、デパートなどに出向いて買うことに価値を置く見方もありそうです。
そうなんですよね。Uber以外でもさまざまな配達方法によって都内で実験をしたのですが、どれもうまくいきませんでした。牛乳だと配達は今でもありますし、パンでもいけるんじゃないかとも思ったのですが、コロナ禍のデリバリー全盛の時代でもなかなか難しかった感じです。
――直営とフランチャイズ(FC)の割合はどんなものなんでしょうか。
2割が直営、8割がFCになります。
――今のフランチャイズビジネスの課題を、どう見ていますか。
こだわりの職人でないと作れない食パンをFCでも展開できるようになりました。このことには手応えを感じています。ただ、現在では本当に一種類の真っ白な食パンを作るだけではダメで、食パンの多様化による競争が生まれてきています。こうした動きに対する不安の要望もいただきます。高級食パンブームがピークを過ぎたのではという声もあります。
それで銀座に志かわでは「あん食パン」や「月初め食パン」などの新商品を投入することで、新たな市場を作ってお客さまを飽きさせない商品を提供していっています。原材料の高騰もあり、22年4月から価格を800円から880円に上げました。
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