中国の自動車産業は覇権を握るのか:池田直渡「週刊モータージャーナル」(2/5 ページ)
なぜ中国の自動車メーカーの勢いは止まらないのか。中国や世界経済を取り巻く状況と合わせて見ていこう。
中国に処罰を与えようとしている米国
要するに米国は西側諸国のリーダーとして、中国の不正を糺(ただ)し、処罰を与えようとしている。そして既にその一部は実行に移されてもいる。思い出してほしいのは、一時期世界のネットワークを制覇する勢いだった華為技術(ファーウェイ)が、米国による世界各国へのファーウェイ製5G通信機器締め出しの働きかけで、排除され経営的に苦戦を強いられている。そのあたりはITmedia Mobileの記事が詳しい。
中国は、WTO(世界貿易機関:World Trade Organization)の一括受諾を義務付けられた付帯書1〜3を01年に批准して加盟した以上、世界の貿易ルールに従わなければいけないが、華麗に無視し続けた。その結果、世界を打ち負かす力に育ってしまったということで、当然「ルール破りによる丸もうけ」は負ける側からしてみれば許し難い非道ということになる。米国商務省産業安全保障局(BIS)は、貿易上の取引制限リスト(エンティティリスト)を発行し、中国製造2025にかかわる企業を中心に世界に対して村八分を呼びかけている。
米国の主張に基づくと、この他にも眉を顰(ひそ)めるようなモラルハザードは枚挙にいとまがない。そもそもWTOの加盟国である以上、輸入は基本自由化されるべきだが、中国は自動車の輸入を長らく認めなかった。
「自動車を売りたければ、中国で製造せよ」「中国で製造したければ中国資本に株式の半分を持たせる合弁企業を設立せよ」「中国で売る電動化モデルには必ず中国製のバッテリーを搭載せよ」という具合に、中国市場を餌に世界中の自動車メーカーと合弁して、技術移転を強要した。
また中国製バッテリーを購入できなければクルマが売れないというチョークポイントを生かして、中国でビジネスを展開したい自動車メーカー各社に対して、CATL(寧徳時代新能源科技)やBYD(比亜迪)との提携を結ばざるを得ない状況に追い込んだのだ。表現はキツイかもしれないが、盗んだ技術と不正な規制で自国産業を育て上げたと言ってもいい。
まだ続く。人民解放軍と関係のある優秀な人材を世界中の大学に留学させ、大学院などの研究室に潜り込ませて、研究者専用サーバなどのデータを盗ませた。痺(しび)れを切らせた米国政府は多くの大学で、中国人留学生を退学処分にするとともにビザを剥奪した。米上院では理系の中国人留学生を全て入国規制させる提案まで出されたほどだ。
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