中国の自動車産業は覇権を握るのか:池田直渡「週刊モータージャーナル」(3/5 ページ)
なぜ中国の自動車メーカーの勢いは止まらないのか。中国や世界経済を取り巻く状況と合わせて見ていこう。
ブロック経済化へ向かう世界
という話をすると、たまに弱肉強食の世界では「勝った者が正義」と主張する人がいる。ところが人類はそういう時代を通り抜けてきているので、学習した結果ルールは作られている。ルールを無視して良いのであれば、砲艦外交だってありだ。アヘン戦争ですら肯定されてしまう。
WTOの前身とも言えるGATT(ガット)について、外務省はこう説明している。
「1930年代の不況後、世界経済のブロック化が進み各国が保護主義的貿易政策を設けたことが、第2次世界大戦の一因となったという反省から、1947年にガット(関税及び貿易に関する一般協定)が作成され、ガット体制が1948年に発足しました(日本は1955年に加入)。貿易における無差別原則(最恵国待遇、内国民待遇)等の基本的ルールを規定したガットは、多角的貿易体制の基礎を築き、貿易の自由化の促進を通じて日本経済を含む世界経済の成長に貢献してきました」
この外務省の説明の裏返しとして、中国に対抗するために、今まさに世界はブロック経済化へ向けて大きく変容しようとしている。米国のインフレ抑制法も、欧州の国境炭素税も明らかにブロック経済へ向けたステップである。
既に米国は「つぶさなければつぶされる」というモードに入っている。インフレ抑制法や国境炭素税がまさにそれを象徴していると筆者は考えている。
以上の流れに鑑みれば、中国の自動車企業についても、米国のエンティティリスト入りの可能性は十分に考えられる。事態は既に製品が良いかどうかとか、コストパフォーマンスがどうとかという領域を外れかかっている。うっかりすれば戦う相手は米軍ということになる。
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