大手新聞社の不動産ビジネスは「東急グループ」に学ぶべき理由:簡単ではない(3/4 ページ)
新聞社や出版社の中には不動産事業に力を入れている企業もあるが、まだまだ経営の柱とはいえない状況だ。不動産ビジネスを進めるなら、東急グループに学ぶべきである。その理由は――。
新聞社と不動産ビジネスの関係は
鉄道会社は、不動産ビジネスを進めるにあたって本業とのシナジー効果を強く意識し、自社のビジネス圏内できちんと人も金も循環させるようにしている。
販売部数が減少し続けている新聞社にとっても、不動産ビジネスは経営の重要な柱に位置付けられる。22年度の朝日新聞社有価証券報告書を見ると、朝日新聞社のグループ全体で、メディア・コンテンツ事業に従事するのは5766人、不動産事業に従事するのは943人、その他の事業は285人となっている。
売上高(とセグメント利益)はメディア・コンテンツ事業2392億3700万円(44億6600万円)、不動産事業307億5900万円(50億7500万円)、その他の事業24億7600万円(-1億5700万円)。
5期前の18年3月期を見ると、メディア・コンテンツ事業は3529億5600万円(39億9000万円)、不動産事業は328億9200万円(38億2000万円)、その他の事業が36億4100万円(3200万円)。直近の数字と比べると、不動産事業の売上高は減少しているものの、利益面で貢献していることがうかがえる。
朝日新聞グループの不動産収入の大部分はオフィス物件であり、ほかにはホテルや飲食店、商業テナントなどがある。広島市では旧広島朝日ビル跡地で再開発計画の実施段階に入ったとのことだ。
確かに朝日新聞グループの不動産事業は厳しい新聞販売を支えているとはいえる。しかしこれは普通の不動産ビジネスであり、新聞ビジネスとのシナジー効果はあまりない。
有価証券報告書には大阪府大阪市北区の「中之島フェスティバルシティ」や東京都中央区の「東京銀座朝日ビルディング」など大型物件の稼働状況の良さが記され、「収益の柱として不動産事業の重要性はますます高まっており、新たな収益源となる計画の推進や保有物件の価値最大化などに積極的に取り組んでいく」としている。
ただ、それが日々の新聞に還元されていて、紙面の充実やジャーナリズム性の高さなどに影響しているかというと、よく分からないと考えるのが妥当だろう。
東急グループは、鉄道、不動産、流通、その他が緊密に連携しあっていると考えると、まだまだといえる。
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