トヨタ、ホンダ、日産「増益と減益を分けたもの」 大手3社の決算をじっくり解説:池田直渡「週刊モータージャーナル」(8/8 ページ)
自動車メーカー大手3社の決算が出そろった。今後数年の予測を含め、全体の傾向および各社の発表内容を見ていこう。
自動車大手3社の23年3月度決算はどうだったか
さて、まとめよう。23年3月度決算において、やはり圧倒的な強さで、横綱相撲を取ってみせたのは、いつものトヨタだった。死角はないのかと言われても、ちょっと見当たらない。
ホンダは、少し心配である。取り越し苦労かもしれないが、悪かったときの日産のパターンにハマっているように見える。まず米国で売れるクルマの層を早急に厚くすべきだ。アコードの出来のいかんによらず、残念ながらもうセダンでは売り上げを支えきれない。長きにわたってアコードの業績が大きかっただけにパイロットとC-RVだけでは心許ないように思えてならない。次いで日本。軽自動車は順調なので、登録車でヒットが欲しいところだ。
日産が善戦しているのはすでに書いてきた通りだが、まだ駒が足りない。国内販売で毎月良い位置につけているのは、現状では「NOTE(ノート)」だけ。「SERENA(セレナ)」と「X-TRAIL(エクストレイル)」をそれぞれ台数で上回る高付加価値車が欲しいところだ。中国についてはむしろここで落ちたことをチャンスに再構築を進め、適正な規模にダイエットすべきときが来ているのではないかと思う。
日産は、よくあの厳しいところから戻ってきたと思う。まだまだ本来のポテンシャルを発揮するまでは道が長いが、今回の決算で復活までの道が見え始めたように見える。
筆者プロフィール:池田直渡(いけだなおと)
1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(カー・マガジン、オートメンテナンス、オートカー・ジャパン)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミュニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。
以後、編集プロダクション、グラニテを設立し、クルマのメカニズムと開発思想や社会情勢の結びつきに着目して執筆活動を行う他、YouTubeチャンネル「全部クルマのハナシ」を運営。コメント欄やSNSなどで見かけた気に入った質問には、noteで回答も行っている。
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