大塚「おにぎり ぼんご」はなぜ人気なのか 休日は6時間待ち:握らない(4/5 ページ)
JR大塚駅の北口から徒歩2分、老若男女から熱烈な支持を得る、おにぎり専門店「ぼんご」。平日は2時間以上、土曜や祝日は6時間ほどの待ち時間が発生する。何が人々をここまで魅了するのか。
クレームはありがたいもの
新潟出身の右近氏は、20歳で上京して「ぼんご」のおにぎりに魅了されたという。24歳で初代店主の右近祐氏と結婚、店で働き始めた。最初こそ皿洗い程度にとどまっていたが、職人が倒れたため右近氏もおにぎりを握るように(「ぼんご」のおにぎりは実際は握っていないのだが、ここでは「握る」と表現する)。
「お客さんの目の前で握るのはプレッシャーでしたし、熱いご飯を握るのは想像を絶することでした。本格的に握り出したのは30歳ごろから。当時のお客さんは全員常連さんで、『代わりに握ってあげようか』とやさしく声をかけてくれる人もいれば、『お前の味噌汁は世界一まずい』『ご飯がやわらかすぎる』とけなす人もいました」
なかなかにハードなクレームだが、「文句を言うお客さんは、ありがたい存在。お客さんに育ててもらった」と右近氏は振り返る。
「黙って残す人は二度と来てくれないでしょうけど、怒って文句を言う人は成長を期待してくれているのだと思います。あのクレームがあったから、ここまでこれたのかもしれない」
多くのクレームをありがたく受け取ってきた右近氏だが、何を言われても信念として貫いたのが、上述した”握らない”手法だった。「空気がいっぱい入ったやわらかいおにぎりが一番おいしい」という主張は、一貫して変えていないという。
「数十年前は、夜に酔っ払った職人さんたちが多く来店していました。酔っているから、やわらかいおにぎりをボロボロに崩すんですよ。『何で、こんなにご飯がやわらかいんだ』と文句を言いながら。でも、今では『おにぎりは、やわらかいほどおいしい』と言ってくれる人が出てきて、信じてやってきてよかったと思いますね」
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