寝具の西川が開発「お尻のまくら」 1万円もするのに2万個以上も売れたワケ:20を超える試作品(1/3 ページ)
寝具メーカー西川が2022年に発売した「お尻のまくら Keeps クッション」が売れている。1万円もするのに発売1年未満で2万個も売れた。ヒットの理由は同社が運営するコミュニティー活用にあるというが……
寝具メーカー・西川の「お尻のまくら Keeps クッション」が売れている。先行販売したクラウドファンディングでは、開始2時間足らずで目標の50万円を達成し、最終的な応援購入金額は20倍の1000万円超を記録した。
価格は1万1000円(希望小売価格)で、チェア用クッションとしては高単価な部類に属する。ヒットの理由は、同社が運営するコミュニティー「みんなの眠ラボ(以下、眠ラボ)」のモニターの生の声を反映した点にあるという。
ヒット商品を生み出すコミュニティーの誕生理由、コミュニティーを活用した商品開発や販売戦略について、イノベーション・マーケティング戦略事業部 マーケティング戦略部の佐藤功之介課長と長尾さつき氏に話を聞いた。
「みんなの眠ラボ」誕生の理由
眠ラボは今から2年前となる21年2月に開設された。コミュニティーとしての機能だけでなく、オウンドメディアとして情報発信も行っており、「睡眠」というテーマにフォーカスし、より質の高い睡眠アドバイスをする「ぐっすりのコツ」や、読者からの質問に答える「おやすみQ&A」コーナーなどが人気である。
現在、眠ラボの登録会員数は約8200人。ユーザーは30〜40代の女性が中心だが、男性も全体の3割強くらいに上る。
サイトを訪れる人は「睡眠の悩みを解決したい」「生活習慣を良くすることに興味がある」など、睡眠に何らかの問題を抱えているか、健康意識が高い人が多いそうだ。
西川は「日本睡眠科学研究所」という研究所を有しており、大学との連携によって科学的に検証された技術を寝具商品やサービスに生かしてきた実績がある。
眠ラボを開設した背景には、研究所の知見を西川商品のユーザーはもちろん睡眠に関心のある多くの消費者に届けられないかという長年の想いがあった。しかし、最大の動機はもっと別の理由があったという――それは自ら情報発信しなければ、あふれる情報の中で埋没してしまうという危機感だ。
「Web広告やSNSなどを通じて情報が氾濫し、消費者は正しい情報を見つけにくく、わたしたちが伝えたい情報をお客さまに届けることが年々難しくなっていると感じていました。とくに高機能・高単価な商品ほど、低価格な商品との差別化が難しくなっています」(長尾氏)
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