経営者が取り組む「人的資本経営」の第一歩 無形資産を可視化するために必要なことは?:【新連載】会社全体で考える「人的資本」(1/4 ページ)
人的資本経営といっても、経営者、人事担当者、投資家など、立場によってその取り組み方、考え方は異なるものだ。本連載では、タナベコンサルティングのエグゼクティブパートナー 古田勝久氏が、それぞれの立場に立った取り組み方を解説する。
会社全体で考える「人的資本」
人的資本経営といっても、経営者、人事担当者、投資家など、立場によってその取り組み方、考え方は異なるものだ。本連載では、株式会社タナベコンサルティングのエグゼクティブパートナー 古田勝久氏が、それぞれの立場に立った取り組み方を解説する。
「会社全体で考える『人的資本』」第1回目は、経営者が取り組むべき事柄について解説したい。
これまで「人」という経営資源については、単年度の損益計算書(PL)において人件費として管理することが一般的だった。そのため、経営の意思決定の場面では、人件費や教育研修費は1年単位で消費されるコストとして管理されてきた。
しかし、近年ではタレントマネジメントへの関心の高まりや、従業員経験(EX:Employee Experience)重視の流れから、「人は重要な財産である」とするHuman Capitalの考え方が広まってきている。資源は利用すれば消耗する有限なものだが、運用の仕方次第でその価値を増大させることも減少させることもあり得るのだ。
「人的資本」という考え方では、数年の時間経過ののち、従業員をいかにして価値創造につながる資産とできるか(無形資産化)が重要だ。つまり、投資によって人的資本を高めることこそが、無形資産としての人材が新たな付加価値を生み出し、持続的な成長を実現させる「人的資本経営」への変革へとつながる。
そのため経営では、1年単位ではなく3〜5年先に視点を置き、価値創造を実現できる人材や可視化されていないノウハウ・文化をできる限りデータに基づいて価値評価し、それらを資産として変換できるよう投資を積極化すべきである。
関連記事
- 上意下達、つまらない経営会議──丸井は昭和的な古い文化から、どう生まれ変わった?
以前は上意下達で、昭和・平成的な組織だったという丸井グループ。会社がつぶれるのが先か、文化・風土が変わるのが先か……という経営危機を経て、どのような組織変革をしたのか。人的資本経営を進める専務執行役員 CHRO石井友夫氏に話を聞いた。 - キリンはなぜ「道場」でDX人材を育成するか その真意
自社の今後を考えると、DXの取り組みは必須。しかし、推進役の人材がいない──。多くの企業に共通する課題だ。採用のアプローチを工夫する企業もあれば、人材育成に投資する企業もある。キリンホールディングスの場合は、「DX道場」を立ち上げた。 - 「就業中の間食はNG」 カインズの昭和体質を180度変えた人事戦略「DIY HR」
ホームセンターのリーディングカンパニーとして業界で名高いカインズだが、「店舗の従業員に許されていないことは本社でも行わない」という古いカルチャーが暗黙の了解として浸透していた。CHROの西田氏は、そんな古い体質を塗り替えていくために新たに「DIY HR」を掲げた。 - 本当に「自社に合った」人的資本の指標とは? 人事が失敗しがちなポイント
人的資本経営の妥当性を評価し、進捗確認するための「指標」は、どう決めれば良いのでしょうか? - 人的資本経営に必要なのは「経営が分かる人事」 人手不足でも取り組むための3つのポイント
無形資本としての人材の価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上を目指す「人的資本経営」が重視されつつあります。企業価値を高める経営手法として注目が高まっている中、具体的にどのように推進していくべきなのか、頭を抱えている企業担当者の方も多いのではないでしょうか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.