新幹線の自動運転 JR東日本、JR西日本、JR東海の考え方の違い:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(3/7 ページ)
JR東日本とJR西日本は5月9日、連名で「新幹線の自動運転について技術協力します」と発表した。JR東海は翌日の深夜から未明にかけて、自動運転の報道公開と試乗会を開催した。JR東日本、JR西日本、JR東海東海はこれまで、自動運転の試験や実験を行ってきた。しかし、各社で考え方が異なる。
JR東日本とJR西日本は当初から「無人運転」を導入予定
JR東日本は21年度に上越新幹線の新潟駅〜新潟新幹線車両センター間、約5キロメートルで回送列車の自動運転を試験した。実験に使用した車両はE7系1編成だ。遠隔制御で列車を発車させ、ATC(自動列車制御装置)の速度信号以下でATO(自動列車運転装置)による自動運転を実施。途中で減速して洗車ラインを通過して、再加速して所定の位置に停車させる。
あわせて5G通信技術の伝送試験を実施し、高精細画像のリアルタイム通信を検証する。この技術は指令所から運転席や車内の様子を監視するために使われるだろう。
JR東日本はこの実証実験を元に、20年代末に新潟駅〜新潟新幹線車両センター間の回送列車で無人運転(GoA4)採用を目指す。
30年代中頃に東京〜新潟間の営業列車でGoA3、運転士なしの自動運転を目指す。
JR西日本は、22年度から北陸新幹線の白山総合車両所敷地内で自動運転機能の実証実験を実施している。使用車両はW7系1編成で、車両の速度制御装置、定められた位置に停止させる制御装置などを開発し、自動運転機能の評価と課題抽出を行うための実証試験を実施してきた。こちらは遠隔制御ではなく、運転士が乗務している。
実証場所は違うけれども、自動運転の手順は同じ。あらかじめ定められた走行計画に沿って列車を動かす。車両はJR東日本のE7系とW7系で、車種の呼び方は異なれど同型だ。北陸新幹線は高崎〜上越妙高間がJR東日本、上越妙高〜金沢間がJR西日本の管轄である。つまり、北陸新幹線で自動運転を実施するならば、両社の技術連携が不可欠となる。だからこれからは協力しましょう、という主旨の発表といえる。
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