JRも私鉄も、鉄道会社が「稼ぐ」ためにやるべきこと:鉄道会社は、総合会社だ(4/4 ページ)
鉄道会社の多くは、本業との「シナジー」を気にしないビジネスを展開している。「稼ぐ」ためには何でもやるという姿勢も、ときには大切ではないだろうか。
鉄道会社の「総合職」がしなくてはならない仕事とは?
鉄道会社には、さまざまな仕事がある。鉄道業務にかかわる仕事もあれば、経営企画にかかわる仕事もある。その中でも「総合職」の主な業務は、会社の経営にかかわることである。実務ではないのだ。
会社が今後どんな方向に進んでいくかを考え、計画や企画を立て、それを実行すること。JR九州や西日本鉄道などが最初に鉄道とシナジーのない事業に取り組み始めたときは、社内で企画が持ち上がり、実際に軌道に乗るまでに段取りを整えたチームがあった。
「この会社で何をやれば稼げるのか?」を考えることは、大事なことである。
経営の厳しい鉄道会社には、本業とのシナジーがあるかないかにかかわらず、新しい事業を行って経営の厳しさから脱却してほしいと筆者は考えている。例えば、JR北海道だ。
国や行政から経営の厳しさを指摘されている中で、シナジーのない新規事業を展開するのは難しいのかもしれないが、一方で稼げる会社になることも望まれている。
現在のJR北海道のビジネスは、鉄道事業のほかに、駅ビル事業やホテル事業が中心となっている。ホテル事業も、北海道内だけだ。JR東日本は「ホテルメッツ札幌」を札幌駅近くで営業している。JR北海道が唯一「稼げる」札幌駅周辺に、ほかのJRがホテルを営んでいる状況だ。
幸いにして北海道は、食べ物がおいしい地域である。百貨店で定期的に開催される「北海道物産展」には多くの人が足を運ぶ。飲食で稼げる可能性はJR九州よりもJR北海道のほうが高いのだ。
北海道の食材を提供することを売りにした飲食店が入ったホテルを、東京で開業してもいいのではないだろうか。北海道の食材を提供する飲食店を東京や大阪で開業してもいい。食品の生産・販売などを行う子会社の設立も大事だ。
「北海道」というブランドと、ポテンシャルの高さは唯一無二のものがある。これを何とかできないのか。ここで稼いでほしいと思うのは、筆者だけではないはずだ。JR北海道の総合職には、ぜひとも「北海道」のポテンシャルを生かしたビジネスを展開してほしいものである。
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