モスの黒毛和牛バーガーは「690円」でよかったのか “高級路線”に踏み切れないワケ:スピン経済の歩き方(2/6 ページ)
モスバーガーの業績が低迷している。原料の高騰に加えて、人件費や光熱費がかさんで、直近の数字は最終赤字に沈んだ。ピンチを乗り切るにはどうすればいいのか。
「高級路線」にしていくしかない
専門家によれば、この問題を解決するには「高価格帯の定番化」しかない。要するに、メニューの中でも高い商品をたくさん買ってもらう、「高級路線」へシフトしていくべきだというのだ。
といっても、ただ高級ハンバーガーを打ち出しても「惨敗」は目に見えている。ご存じのように「安いニッポン」にはマックや牛丼の値上げで、「高すぎる! 消費者をバカにするな!」「二度と行きません、さようなら」とネットやSNSに悪口を書きまくる「正義の人」が山ほどいる。
だだでさえ、モスバーガーは「なんであんなにセットが高いんですか?」「確かにおいしいけれど高すぎる」なんて叩かれている。高級化路線は、飛んで火にいる夏の虫という感じで、大規模なモスボイコット運動に発展してしまう恐れもあるのだ。
こういう恐怖で萎縮しているからか、モスバーガーは高級路線へ舵を切ることができていない。それを象徴するのが、「モスプレミアム」だ。
この店舗は高級ハンバーガーとクラフトビールが楽しめるということで、和牛バーガー クリームチーズテリヤキ(ポテト付き)で1790円と、シェイクシャックなどと比べてまったく遜色ない。が、「最高級のハンバーガーを提供する」を掲げて19年からスタートしたものの、店舗は東京の千駄ヶ谷と横浜の桜木町にしかない。高級路線に参入したものの、いまだにプロトタイプというか、そこまで本腰は入れられない状況なのだ。
ずいぶん以前からモスバーガーとして生き残っていくには、高級路線に針を振っていかなければいけないことは分かっているものの、消費者から反感を抱かれるのが恐ろしくて、大きく打ち出すことができないのだ。それはつまり、「モノの価値を下げて売る」という既存のビジネスモデルからなかなか脱却できていないということだ。
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