東海道新幹線の運休で大混乱、JR東海の対処は適切だったか:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(6/6 ページ)
6月2日の午後から3日の午前、東海道新幹線が運休となった。3日午前中には、筆者が予約した「のぞみ25号」があったが、みどりの窓口できっぷを買っていたことが後の後悔につながる。最終的には5時間遅れて出雲市に到着したが、今回の体験と、JR東海の対処、乗客がすべき対応などを紹介したい。
14時23分、ようやく私の番が巡ってきて、15号車のデッキに乗れた。この列車は「のぞみ37号」博多行き。本来は新横浜駅13時48分発で、35分遅れだ。結局この列車で岡山まで立ちっぱなし。途中の駅でも自由席車両で乗降に時間がかかり、さらに名古屋駅では非常ボタンが押されて列車が数珠つなぎ状態になった。その様子がネットでも話題になっていた。
名古屋発車時も混雑し、新大阪でかなり空いて、新神戸ではデッキに私だけ。もう自由席も座れそうだけど、15号車から3号車まで歩く気力はなかった。岡山到着は95分遅れの18時23分着だった。「やくも25号」に乗り継いで、出雲市着は22時11分。予定より5時間遅れた到着となった。まだまだ体力があるものだと自分を励まし、しかし疲れて仕事にならず。明日に備えてすぐに寝た。
今回の反省点としては、東海道新幹線の運行予定が怪しいときは、みどりの窓口ではなく「EX予約」「スマートEX」がいい、ということだ。今回は乗車券の往復割引に目がくらんだけれど、「EX予約」「スマートEX」はオンラインで予約変更ができる。かつては新幹線と在来線特急「やくも」には乗継ぎ割引があって、同時に指定席を手配すると在来線特急料金が半額になった。しかし今年3月で岡山発着の特急列車は適用外になっている。窓口できっぷを買う利点は少ない。
乗客にとっては旅行中止が正解だったかもしれないが、それでも乗ろうとする乗客は東海道新幹線に対する信頼があった。それに応えるべく、5本の全車自由席の臨時列車増発など混雑解消に先手を打った施策は高く評価できる。
しかし午前中に乗れなかった乗客を吸収するには不足だった。東京駅、品川駅の混雑も想像に難くないとはいえ、新横浜駅は相鉄・東急新横浜線の開業で利用者が増えており、そこに配慮がほしかったと思う。また、混雑整理の面でも、乗車優先順位については駅の案内放送で早めに伝えてほしかった。こうした課題を今後の参考としてほしい。
杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)
乗り鉄。書き鉄。1967年東京都生まれ。年齢=鉄道趣味歴。信州大学経済学部卒。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。出版社アスキーにてパソコン雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年よりフリーライター。IT・ゲーム系ライターを経て、現在は鉄道分野で活動。著書に『(ゲームソフト)A列車で行こうシリーズ公式ガイドブック(KADOKAWA)』『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。(幻冬舎)』『列車ダイヤから鉄道を楽しむ方法(河出書房新社)』など。公式サイト「OFFICETHREETREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」。
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