東海道新幹線の運休で大混乱、JR東海の対処は適切だったか:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(5/6 ページ)
6月2日の午後から3日の午前、東海道新幹線が運休となった。3日午前中には、筆者が予約した「のぞみ25号」があったが、みどりの窓口できっぷを買っていたことが後の後悔につながる。最終的には5時間遅れて出雲市に到着したが、今回の体験と、JR東海の対処、乗客がすべき対応などを紹介したい。
「悪天候のため」とはいわない潔さ
もうひとつ、残念なことは「デッキ地蔵」だ。指定席車両の座席間の通路に立つ人も多い。これは指定席を予約している人も、その人を見下ろす形の立ち客も気まずい。しかしこんなときはお互い様だ。ところが、ある列車は通路に立つ人がいないにもかかわらず、誰も乗り込めなかった。デッキで立ちふさがった人がいたに違いない。通勤電車で扉付近に立って乗降の邪魔になる人を「ドア地蔵」と私は呼んでいるけれど、新幹線や特急列車では「デッキ地蔵」と呼びたい。
きっぷのルールでは、自由席利用者は自由席車両のみ。自由席がデッキまで満員の場合は車掌の裁量で指定席のデッキ利用も認められる。しかしこんな時は指定席通路も認められるべきだし、ほかの車両はほとんど通路も使われていた。ここは駅員さんがデッキ地蔵にひと声かけてほしかった。駅員さんも大変だと思うけれども。
行列が少し動くようになると、乗車口で駅員さんが「指定席券を持つ人」を募り、先に案内するようになった。その列車の指定席を持つ人だろうと思うけれど、乗ったままデッキに立つ人もいて、もしかしたら私のように運休した列車の指定席券を持つ人を優遇してくれたのか。それは定かではなく、私は行列を崩したくないのでそのまま待っていた。
印象的だったことは、駅員も車掌も、案内放送で「悪天候のため」とはひと言もいわなかった。「本日はお客様が大勢いらっしゃいます」「混雑でご迷惑をおかけしております」など、事実のみ伝えている。これは潔いというかカッコよかった。悪天候が原因なんて、ここにいる誰もが知っていることで、言われなくても分かっていることをわざわざ言われたらむしろイラだつ。それを分かっているのだろう。ひたすらお詫び、クレームを聞き続け、安全確認に気を使う。大変な仕事だと思った。
関連記事
- 次の「新幹線」はどこか 計画をまとめると“本命”が見えてきた?
西九州新幹線開業、北陸新幹線敦賀延伸の開業時期が近づいている。そこで今回は、新幹線基本計画路線の現在の動きをまとめてみた。新幹線の構想は各県にあるが、計画は「建設を開始すべき新幹線鉄道の路線を定める基本計画」として告示されている。これと費用便益比、各地のロビー活動の現状などから、今後を占ってみたい。 - ドラえもんがつくった地下鉄は公共交通か? ローカル線問題を考える
『ドラえもん』に「地下鉄を作っちゃえ」という話がある。のび太がパパのためにつくった地下鉄は公共交通と認められるか。この話をもとに、公共交通になるための過程、利用者減少から撤退への道のりを考えてみたい。 - 2025年の大阪・関西万博で、鉄道の路線図はどうなるのか
2025年に大阪、夢洲で「2025年大阪・関西万博」が開催される。政府は主要公共交通機関に大阪メトロ中央線を位置付けた。このほか会場へのアクセスには船とバス、さらに具体化していない鉄道ルートが3つ、近畿日本鉄道の構想もある。また会場内の交通には、3種類のモビリティが計画されている。 - 不人気部屋が人気部屋に! なぜ「トレインビュー」は広がったのか
鉄道ファンにとって最高の「借景」が楽しめるトレインビュールーム。名が付く前は、線路からの騒音などで不人気とされ、積極的に案内されない部屋だった。しかし鉄道ファンには滞在型リゾートとなり得る。トレインシミュレーターや鉄道ジオラマなど、ファンにうれしい設備をセットにした宿泊プランも出てきた。 - 東京メトロ「有楽町線」「南北線」の延伸で、どうなる?
東京メトロ有楽町線と南北線の延伸が決定した。コロナ禍で事業環境が大きく変化する中、東京メトロが計画する今後の戦略とは。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.