「3割退職・目標未達・売上前年割れ」 退職者が出戻るほど成果が出た、データドリブンな営業改革とは:脱・属人的な営業(2/4 ページ)
ウイングアーク1stは当時「3割退職・目標未達・売上前年割れ」の三重苦にあえいでいた。個人商店的な昭和の営業スタイルから一転、データドリブンな営業へ脱皮するための改革に力を入れることに。退職者が出戻るほどに成果が出た、営業改革を取材した。
使いものにならなかったSalesforceのデータ
実はウイングアークでは2011年からSalesforceを導入し、営業DXに取り組んできた過去がある。当時久我氏はそのデータを活用しようと試みたものの、まったく使い物にならなかったという。なぜなら8〜9割の営業はSalesforceを利用していなかったからだ。
「当時はSalesforceの入力項目が80個以上と膨大な数でした。さらに、入力結果はどこにも活用されていませんでした。これでは営業もヤル気が出ないでしょう」(久我氏)
結果的にSalesforceのデータは活用されないまま、いつまでも空回りした営業会議が繰り返されていたのだ。
データドリブンな営業改革はいかに進められたか
そこで久我氏がまず着手したのは、「どこに問題があるのか」を探ることだった。
当時の営業社員たちに業務別にかかる時間をヒアリングしたところ、「商談」は全体の34%に過ぎず、あとは「移動時間(19%)」「事務(21%)」「会議(10%)」と、本業以外の仕事が半分を占めることが分かった。営業日報・週報を書く決まりもあったが、これにかかる時間はおよそ1週間あたり420分にも上った。
「当時は個人商店の集まりで売り上げの管理もあまりしていませんでした。それでも売り上げが伸びていたので、『このままでいい』と現状維持を選んでいました。しかし売り上げが右肩下がりになり、改革の機運が高まっていったんです」(久我氏)
そこで久我氏らはこれまで営業社員に徹底していた営業日報・週報を思い切って廃止し、Salesforceに統合することにした。また80個以上あった入力項目も必要最低限の以下8個に減らした。
- お客さま名
- 売上予定日
- 商談金額
- 製品カテゴリー
- 商談フェーズ
- 着地フラグ
- 案件確度
- 販売チャネル
これだけで1週間あたり420分かかっていた事務作業を、約3分の1の150分と大幅に減らすことに成功した。
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