「3割退職・目標未達・売上前年割れ」 退職者が出戻るほど成果が出た、データドリブンな営業改革とは:脱・属人的な営業(4/4 ページ)
ウイングアーク1stは当時「3割退職・目標未達・売上前年割れ」の三重苦にあえいでいた。個人商店的な昭和の営業スタイルから一転、データドリブンな営業へ脱皮するための改革に力を入れることに。退職者が出戻るほどに成果が出た、営業改革を取材した。
営業DXで気をつけたいポイント
個人商店色を和らげ、DXを進めるなかで社員からの反発はなかったのだろうか。どのように社内を説得したのか、そのコツも久我氏に聞いてみた。
「はじめは5人程度のメンバーを対象にしたスモールスタートでした。また属人的営業のしがらみを解くために、チームメンバーも再編成しました。そこで1年もたたずに売り上げを1.5倍に伸ばせたおかげで、徐々に社内の理解が進み、スムーズに拡大できたという感じです」
改革を実行した場合と、しなかった場合で削減できるムダを比較したり、なかなかデータ入力が進まない社員は過度に追求せず「次からはお願いします」と柔らかく促したりしたという。
久我氏は「データの正確性を保つために入力ルールの明文化、上司チェックなど仕組み化を徹底しているものの、100%を目指さないことも重要だ」と話す。
「いくらデータドリブンな営業とはいえ、完璧主義はよくありません。そもそもSalesforceの最初の失敗は完璧を追求しすぎたことでした。私たちはよく『数字だけで人を叩くな』と注意していますが、大切なのは『営業目標を達成する』というゴールを明確にすることなのです」
最終的に久我氏らの地道な努力は10年におよんだ。だがその成果が実り、売上高は10年前に比べて大幅に成長している。
営業のもつ「ポテンシャル」を最大化させる
久我氏は営業目標を達成するために大切なこととは、限りある時間を「いかに効率化し、最大化するかだ」と振り返る。
「営業にとって最も大切な資本は『時間』です。だからこそ、無駄に使うのではなく、どうすればその価値を最大化できるか考えるべきではないでしょうか。無駄を省くにはまずボトルネックを知る必要があります。正しいデータがあれば、どこにフォーカスすべきか見えてきますから、どんどんPDCAのサイクルが早まっていくでしょう」
ともすれば精神論だけで語られがちな「昭和スタイルの営業」に頼っていたウイングアーク。しかし、合理的で現代的な「データドリブンな営業」へと進化したおかげで社員の定着率も高まり、採用もしやすくなったという。今では辞めていった社員が復職する機会も増えてきた。
最後に久我氏は「これまでの日本企業は営業とマーケティングが分離しているケースが多かったでしょう。しかしこれからの経営では、数字に基づいてボトルネックを探り、弾力的に両者が一体となって利益の最大化を図るレベニューマネジメントが大事になってくると思います」と締めくくった。
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