エンジン車の燃費は向上できるのか まだまだできることはある:高根英幸 「クルマのミライ」(5/6 ページ)
クルマの燃費性能は、この20年ほどで急速に向上した。「もう限界でしょ」と思われている人もいるかもしれないが、まだまだできることはある。例えば……。
安全を確保するための信号から、渋滞を緩和させるシステムへ
日本の信号機は道路の総延長と信号機の数から計算すると、設置の密度において世界一なのだとか。
それほどまでに信号をやたらと増やしてきたのは、歩行者の安全のためと交通事故を減らすのが目的のはずである。そういう意味では信号の増設はそろそろ終わり、新たな信号システムの構築を目指すのがこれからの役割ではないだろうか。
信号機自体もLED化によってメンテナンスの頻度も減少しているのだから、信号機にかける予算をメンテナンスからインテリジェント化へと振り替えていくべきだ。
なにしろ国道や大きな幹線道路であっても、空いているのに青信号を1つ2つしか通過できずに赤信号につかまってしまうようなところは多い。これはIT化して広く周辺を連携させれば、無意味に停止する信号の数を減らすことができるはずだ。ゼロからの発進加速は燃費を悪化させる大きな要因なので、信号で停止する回数を減らせば、燃費は確実に向上するだろう。
一部の幹線道路や国道では、一度赤信号で停止すると、その後かなりの数の信号は青のまま通過できることもある。これは系統制御と呼ばれるもので、どれか1つの信号機を中心に周辺の信号機を連動させて制御することにより、交通の流れを円滑にするものだ。ただこれは定周期制御といって、曜日や時間帯などによってあらかじめ設定された時間に青信号にするだけのものだ。
交通量に応じて青信号の時間を周囲の信号機と連携させて、交通渋滞を緩和させる交通感応制御もあるし、路線バスを優先させる制御も導入されているが、近年は目立った進化や普及の効果を感じさせない。
交通管制センターで地域の主要な信号を集中制御させる仕組みも、最新の技術を導入すればもっと効率のよい制御が行えるはずだ。
過密した都心部では一定数の信号でクルマを停車させることにより、円滑な交通が実現できるのは当然のことであるが、都市部でも郊外でも速度抑制が目的に思えるような信号による停車が多すぎる。
制限速度を60キロに引き上げた道路でも、信号での停車が繰り返されるようであれば、加速時間が増えるだけでなく、停車時のアイドリングやアイドリングストップからの始動により排気ガスが増えてしまう。こうしたことに、行政はもっと真剣に取り組んでほしい。
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