スシローは「6700万円の損害賠償請求」を止めるべき、3つの理由:スピン経済の歩き方(2/6 ページ)
回転寿司チェーン「スシロー」を運営する「あきんどスシロー」が揺れている。備えつけの醤油の差し口や湯呑みを舐めまわしていた岐阜県の少年に対して、約6700万円の損害賠償を求めていることが明らかに。この対応は「吉」と出るのか、「凶」と出るのか。
「不祥事コンボ」によって低迷
まず、(1)の『「スシロー低迷は迷惑動画だけが原因か」という議論が盛り上がってしまう』に関しては、既に少年側は答弁書で、「客が減ったのはほかの回転ずし店との競合も考えられる」と反論している。少年の弁護士は訴えを取り下げてもらうか、6700万円をなるべく減額させることが仕事なので当然の主張だ。
「見苦しいぞ! 本当に反省しているなら親戚からカネをかき集めてでも6700万円払え!」と不快になる方も多いだろうが、この反論はそんなに無理筋ではない。
実は少年が醤油さしをペロペロする前から、スシローは顧客の信用を失って客足が落ち込んでいたからだ。それは自分たちでも認めている。同社の2020年度第3四半期決算説明資料にはこんな説明がある。
「景品表示法に係る措置命令を受け、お客様の信頼を失う事案を発生させてしまった事により客数が減少し、売り上げが想定を大幅に下回る結果となった」
この「お客様の信頼を失う事案」とはご存じ、22年6月に発覚した「おとり広告」問題だ(関連記事)。21年9月、テレビCMで「濃厚うに包み」と「新物うに 鮨し人流3種盛り」などを盛んに宣伝していたが、実はほとんどの客はこれらの商品を食べることはできなかったのである。
ちなみに、この「おとり広告」問題以降も、「お客様の信頼を失う事案」が続いた。7月には、告知した生ビール半額キャンペーンが実際には品切れで注文できなかった問題も発覚。さらに、10月1日開始のキャンペーンで提供予定だったキハダマグロを、一部の店舗で誤って9月下旬から販売していたことが分かった。
こういう不祥事が続いて客足が落ち込んでいたところに年が明けた23年1月、例のペロペロ事件が起きたという流れなのだ。
もちろん、あの動画をマスコミが面白がって朝から晩までお祭り騒ぎをしたことで、SNSには「気持ち悪い」「もう一生スシローに行きません」というヒステリックな声があふれたのは事実だ。これを受けて、ピュアな消費者たちの客足にも大きな影響があったことだろう。
が、一方でスシローが昨年からの「不祥事コンボ」によって低迷していたのも事実だ。そういうダウントレンドの中で、どこまで「ペロペロ少年」が招いた損害なのかということをジャッジするのはかなり難しいはずだ。当然、少年側の弁護士はそこを突いてくる。
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