スシローは「6700万円の損害賠償請求」を止めるべき、3つの理由:スピン経済の歩き方(3/6 ページ)
回転寿司チェーン「スシロー」を運営する「あきんどスシロー」が揺れている。備えつけの醤油の差し口や湯呑みを舐めまわしていた岐阜県の少年に対して、約6700万円の損害賠償を求めていることが明らかに。この対応は「吉」と出るのか、「凶」と出るのか。
最小限に抑えて「いい負け方」をすること
もしそのような主張が、マスコミに報道されて注目を集めるようなことがあれば、「おとり広告」問題などが再び蒸し返される恐れもある。さらに最悪なのは、裁判所が少年側の主張をある程度認めたときだ。
「確かに少年の行動によって客足は落ちたが、スシローはそれ以前からも、おとり広告問題などで信用が落ちていて客足が減っていたので、すべてがこの少年のせいだという主張は認められない」なんて感じのことが、判決文に書かれて、スシロー側の6700万円が退けられてしまったらどうなるのか。「なんだよ、スシローは業績低迷をぜんぶペロペロ少年のせいにしようとしたのかよ」なんてイメージが世間に定着する恐れがある。
裁判である以上、主張が100%認められないリスクがある。つまり、「正義はわれに」と6700万円という高額損害賠償請求をしたまではいいが、裁判所に「いや、さすがに6700万円はふっかけすぎでしょ」と否定されてしまうことで、少年の「罪」を軽くしてしまい結果、スシローの企業イメージを悪化させてしまうのだ。
誤解している人も多いが、企業危機管理というのは、悪い奴に処罰するとか、勝つとか負けるかという話ではない。「危機」が発生した時点で、企業は「負け」ている。そのダメージをいかに最小限に抑えて「いい負け方」をするかがポイントだ。
残念ながら、仮にスシローの主張が100%認められて、この少年から6700万円満額の賠償金を取れても、それは「勝ち」ではない。スシローの企業イメージが上がるわけではないし、客足が戻るわけでもないからだ。むしろ、やればやるほど、「いい負け方」から遠のいていく。
そう考えるのは(2)の『少年側に賠償金を払わせても、「スシローは安全」というイメージが回復しない』ということもある。
今回、少年の動画によって客離れが起きているとしたら、そのような人たちはスシロー側の衛生管理に疑いをもっているわけではない。「あの少年は氷山の一角で、回転寿司にはああいう悪ふざけをする迷惑客がたくさんいて、知らず知らずに汚いものを口にしているかも」という恐怖心をもっているからだ。
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