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スシローは「6700万円の損害賠償請求」を止めるべき、3つの理由スピン経済の歩き方(4/6 ページ)

回転寿司チェーン「スシロー」を運営する「あきんどスシロー」が揺れている。備えつけの醤油の差し口や湯呑みを舐めまわしていた岐阜県の少年に対して、約6700万円の損害賠償を求めていることが明らかに。この対応は「吉」と出るのか、「凶」と出るのか。

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スシローが得られる「果実」は少ない

 さて、では少年と家族に損害賠償として数百万円を支払わせたら、世間の「恐怖心」をきれいさっぱり解消できるだろうか。できるわけがない。少年のような迷惑行為に走ってしまいそうな人々への一定抑止力にはなるかもしれないが、だからといって急に、「回転寿司の衛生管理って安心だよな」とはならない。

 つまり、少年が6700万円を払おうが、数百万円払おうが、それは「愚かな人が報いを受けた」と世間に知らしめるだけで、スシローのレピテーション(評判)が上がるわけではないのだ。「よくやった! スシローのおかげでバカに思い知らせてやった」なんて喜ぶ人たちは「勧善懲悪のリンチショー」を楽しんでいる野次馬なので、ネットやSNSで悪口を書くが、現実世界でスシローの客足回復に大して貢献もしない。


迷惑行為を受けて、あきんどスシローがコメントを発表(23年2月24日)

 むしろ、レピテーションは下がるリスクのほうが高い。先ほど申し上げたように、「スシローはペロペロ少年を、業績低迷のスケープゴートにしたのでは」なんて悪評が立つかもしれないからだ。

 このようなメリットとデメリットを天秤にかけて冷静に判断すると、少年に6700万円の損害賠償請求をすることは、あまりにもスシロー側が得られる「果実」が少ないのだ。

 しかも、少ないどころか、少年に高額賠償請求をしたことが裏目にでて、新たな「危機」を誘発してしまう恐れもあるのだ。それが(3)の『スシローが「異物混入」「食中毒」などを起こすと、これまで以上に厳しく叩かれる』である。


訴えてもスシローが得られる「果実」は少ない

 もしスシロー側の訴えを裁判所がかなり認めて、この少年とその家族に数千万円という高額な賠償金を支払わせることになったとしよう。世論も「不適切投稿をするバカ」に臆することなく立ち向かったとして、スシローをヒーローのように褒め称えたとしよう。

 そんな矢先、今度はスシローの店舗で、「異物混入」が起きたらどうだろうか。こういう話はつい最近もどっかのうどんチェーンでもあったので、いつ起きてもおかしくない。

 あるいは、スシローの店舗で、食中毒が起きてしまったらどうか。どこかの店舗で、スタッフの人為的なミスによって、多くの客が腹痛や嘔吐に苦しんで、病院に担ぎ込まれるような事故が起きてしまったらどうか。もちろん、あってはならないことではあるが、衛生管理に厳しい大手チェーンでも、ヒューマンエラーなどでこのような不幸な事故は、定期的に発生しているのだ。

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