スシローは「6700万円の損害賠償請求」を止めるべき、3つの理由:スピン経済の歩き方(5/6 ページ)
回転寿司チェーン「スシロー」を運営する「あきんどスシロー」が揺れている。備えつけの醤油の差し口や湯呑みを舐めまわしていた岐阜県の少年に対して、約6700万円の損害賠償を求めていることが明らかに。この対応は「吉」と出るのか、「凶」と出るのか。
世間から厳しく当たられることを覚悟
さて、こういう「不祥事」がスシローに発覚したら、皆さんはどう思うだろうか。「ドンマイ、ドンマイ、人が死んだわけじゃないし、オレはこれまでと変わらずスシローを応援するよ」という人もいるだろうが、「ペロペロ少年によって衛生管理の信用が損なわれたとか言ってたけど、そもそも衛生管理なんて、なってないじゃんか」と釈然としない人も少なくないのではないか。
さらにこれらの「食の安全」を揺るがす不祥事の対応がグダグダだったら、「未成年者の悪ふざけにはめちゃくちゃ厳しいくせに、自分たちのミスには大甘だな」なんて厳しい批判も寄せられるだろう。
このあたりは、政治の世界における、野党やマスコミを想像していただくと分かりやすいかもしれない。政府に不祥事や、何か落ち度があったとき、野党やマスコミは鬼の首を取ったかのように攻撃する。辞任せよ、政治家をやめろ、独裁者だなんだとボロカスに叩く。
ただ、そういうことで「われは正義なり」と調子に乗っているとたいがい、身内に似たような不祥事や落ち度が発覚する。そうなると、ちょっと前まで威勢のいいことを言っていたのが、急に歯切れが悪くなる。ムニャムニャと苦しい言い訳をする。そういう野党やマスコミの「ダブルスタンダード」はネットやSNSでボロカスに叩かれて、信用が大きく失墜する。
こういうレピテーション低下の「アリ地獄」を何年も続けているので、日本の野党は有権者からそっぽを向かれて、選挙でもパッとしない。テレビの報道番組や新聞も視聴者や読者がどんどん減っている。政治家や企業の不祥事があれば「祭り」のように叩きまくるくせに、ジャニーズの性加害問題になると急にお口にチャックという「変わり身の速さ」も叩かれている。
人を厳しく批判するということは、自分自身も厳しい批判を受ける覚悟がなくてはいけないのだが、野党やマスコミはどういうわけか、自分たちはそれが「免除」されると勘違いしている。だから、どんどん信用が落ちていく。
実はこれはスシローにも同じことが言える。あれだけ非常識なことをしたのだから、少年に6700万円を求めるのは個人的には妥当だと思う。ただ、そのようにミスをした人間に厳しく当たるのなら、自分たちもミスをしたときに同じくらい世間から厳しく当たられることを覚悟しなくてはいけないのだ。
企業危機管理をやっていると、経営者などはよく「デタラメ記事を書いているマスコミを訴えたい」「SNSで批判しているこの有名人にツイートを削除をさせたい」という相談を受ける。気に食わない相手を潰すことを、危機管理だと勘違いしているのだ。
相手は感情のある人間なので、大企業から訴えられたり、潰されたりすると当然、そこで怒りを抱く。中には「報復」を誓う人もいて、事態をさらに悪化させてしまう。
企業の過剰すぎる対応は、軽い「アンチ」くらいの人を、その企業を叩くことが生き甲斐という「ストーカー」に変えてしまうことがあるのだ。そういう中長期的なところまで見て、リスクを回避していくのがわれわれの仕事だ。
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