「物言う株主」と対立のセブン&アイ コンビニとスーパーの「二刀流」を選んだ理由:株主はコンビニ注力要求(3/4 ページ)
事業の方向性を巡り、米投資会社バリューアクト・キャピタル・マネジメントと「セブン&アイ」経営陣の対立が深まっている。セブン&アイはなぜコンビニとスーパーの「二刀流」を選んだのか。
若者に選ばれないコンビニ
コンビニバイトは、若者に敬遠されがちだ。コンビニは「便利」すぎる。業務範囲が広すぎる。覚えることが多すぎる。
「駅前のコンビニははずして、離れたところを選ぼう」。こういった情報がSNSで拡散され、繁忙店にはバイトが来なくなる。
セブン・イレブン・ジャパンは、アルバイト経験者がオーナーになった場合、ロイヤリティを割り引く独立支援制度を導入している。しかし、バイトすら敬遠する彼ら(彼女ら)が、生業として、「15年間」拘束されるコンビニオーナーを選ぶだろうか。
契約更新しないオーナーたち
現在のコンビニオーナーも、契約更新を躊躇(ちゅうちょ)する。自身の高齢化と業務負担増のためだ。
経済産業省が行った「コンビニ調査2018」では「契約更新をしたい」という回答が、14年の「68%」から、18年には「45%」と、低下傾向を示した。同時期に行われたヒアリングのオーナー発言からは、憔悴(しょうすい)しきった様子がうかがえる。
「自分も、もう長くはやれない」
「今ここにいる人達も15年後にはおそらく引退している」
「年配のオーナーが契約を打ち切り、うちの従業員として働いている」
回答者の多くは、コンビニという商売が好きだった人たちだ。しかし、発言からは、更新する意欲や気力は感じられない。5年、10年、15年。キリのいい年数が、ヒアリングで頻出する。コンビニ本部との契約期間だ。オーナーたちの時間軸は、アクティビストのそれよりはるかに長い。
店舗数も飽和状態
店舗数も飽和状態だ。日本フランチャイズチェーン協会の統計時系列データによると、コンビニの店舗数は、5年前と比べ「100.2%」(5万5743→2022年末で5万5838店)と、横ばい。セブンイレブン単体では、「102.5%」(2万955→2万1401店)。こちらも、ほぼ横ばいと言って良いだろう。
19年11月、経済産業省のコンビニ本部ヒアリングにて、ファミリーマートの澤田貴司社長(当時)は「残念ながら市場は完全に飽和している」と述べた。セブン&アイも中期経営計画 2021-2025(2021年7月1日)にて、「踊り場を迎えた」と記している。
新オーナーのなり手不足、現オーナーの引退、店舗数の飽和。直営化すれば利益が大幅ダウン。これが国内コンビニ市場の将来だ。では、海外はどうか。
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