甲子園の何が問題なのか 元「エースで4番」の学者が語るマネジメント論:「任務は遂行する」「部下も守る」(3/4 ページ)
「『任務は遂行する』『部下も守る』 『両方』やらなくっちゃあならないってのが『幹部』のつらいところだな」――会社にとって「エースで4番」ともいえる管理職。マネジメントに悩む人も多い。ヒントを「エースで4番」として甲子園に出場した桐蔭横浜大学の渋倉教授に聞いた。
渋倉さんによると、人間がやる気や意欲を高めるための要素には3つある。「有能性の欲求」「自律性の欲求」「関係性の欲求」の3つだ。
有能性の欲求とは、自分の能力を証明することへの欲求を指す。自律性は、自分の行動を自身で決めることに対する欲求だ。最後の関係性の欲求は、周囲との関係に対する欲求で、この3つを満たすことにより選手のやる気は高まり、その結果としてより高いパフォーマンスを発揮できるようになるという。プレイヤーズセンタードコーチングは、これらの条件を満たしているといえる。また、スポーツだけでなくビジネスの現場でも活用できる考え方でもあるだろう。
マネジメントで重要なのは「テクニック」ではない
万能にも見えるプレイヤーズセンタードコーチングの考え方だが、渋倉さんは「マネジメントでは、テクニックに惑わされないことも重要です」と話す。
「昨今よく聞くのが『若手は褒めて育てろ』というテクニックです。これが誤って伝わり、いつでもどこでも褒めなければいけないと理解している人も多いと感じています」
例えば、マネジメントでは場面に応じて注意することも求められる。褒めて育てる風潮から、注意することはいけないことだと感じている人も多い。テクニックに惑わされている典型だろう。若手にも「注意=怒られた」と感じる人も少なくないという。しかし、あくまで問題は、メンバーが何か失敗したときにマネジメントをする人がイライラしたり、ムカッとしたりした感情をアクションとしてぶつけてしまうこと。感情をのみ込んで、冷静に注意することは全く問題がない。
重要なのは、テクニックはテクニックだと理解し、メンバーやシチュエーションに応じて使い分けることだと渋倉さんは話す。そして、使いながら磨き上げて自分なりのマネジメントスタイルを確立することがこれからは求められていく。
「スポーツの技術と一緒で、マネジメントのテクニックも使いながら学んでいくのが大事です。最初から完璧な人はいませんから」(渋倉さん)
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