育児との両立支援、企業の半数が「支障あり」 中小では雇用も厳しくなる?:東京商工リサーチの調査(2/2 ページ)
政府の少子化対策のうち、仕事と育児の両立支援について、企業の半数が「業務に支障が出る」と回答した。支援策別で見ると、最も多かったのは「3歳までの在宅勤務」だった。
産業別で最多は「製造業」
産業別では、「支障あり」と答えた企業は「製造業」(55.3%)が最多。次いで「建設業」が52.8%、「小売業」が52.4%。これら3産業が半数を占めた。
この3産業を支援策別でみると、「3歳までの在宅勤務」の割合が高く「製造業」で42.6%、「建設業」で38.7%、「小売業」で39.3%と4割前後で並んだ。「工場や工事現場、店舗での業務は在宅での対応は難しく、仕事と育児の両立支援策では細やかな現場の実情把握も必要だろう」(東京商工リサーチ)。
業種別で最多は「学校教育」
業種別(母数10社以上)で「支障あり」と答えた企業で、最も多かったのは「学校教育」(81.8%)だった。東京商工リサーチは「コロナ禍でリモート授業も一部浸透したが、大半の授業開始時間が固定であること、対面が必須の授業も多いことから、在宅勤務やフレックスタイム制の導入が難しい現実を示している」と予測する。
5位は「宿泊業」(構成比65.0%)、9位は「社会保険・社会福祉・介護事業」(同63.1%)や「飲食店」(同61.2%)など、対面サービス業の構成比が高かった。また、製造業が上位15業種のうち7業種を占めた。人手不足が解消しない中で、製造ラインの人員見直しが難しいことが浮き彫りになった。
東京商工リサーチは「政府の支援策の拡充で仕事と育児が両立しやすくなることが期待される。だが、資金的な制約で支援策の導入が難しい企業では、子育て世代の働き手の雇用を抑制することが懸念される。従業員の働き方に加え、子育て世代の従業員採用への支援を抱き合わせた制度の検討も必要だろう」と指摘している。
調査は23年6月1〜8日、全国の企業を対象にインターネットで実施。有効回答数は5283人。資本金1億円以上を大企業、1億円未満(個人企業等を含む)を中小企業と定義した。
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