売上高1000億円は達成できるのか アパレル業界の新星「TOKYO BASE」への懸念:磯部孝のアパレル最前線(2/4 ページ)
おしゃれ好きな若者をターゲットにアパレルショップを展開するTOKYO BASE。創業から16年で売上高191億円の企業に成長した。寡占化が進むアパレル業界の中にあって、最速で売上高1000億円を目指すという同社の歩みとこれからについて考えてみた。
TOKYO BASEの一番の強み
不採算店をわずか1年足らずで黒字化し、新フォーマットによる今日までのTOKYO BASEの成功要因とは何か。幾つか理由が挙げられるが、TOKYO BASEの一番の強みは実店舗による販売力ではないだろうか。
TOKYO BASEのネット販売比率は27%で、業界上位のTSIホールディングスの34%には届かないものの、ユナイテッドアローズの25%に比べれば高い。アパレルのネット販売は高価格帯に有利に働くことを考えても、まだまだ伸ばせる余地があるようにも思えるが、裏を返せばそれだけリアル店舗での販売力があるともいえる。
16年頃の資料によれば「1%の顧客を狙う」とある。「友達感覚の接客」という販売スタイルからか1人の接客に平均30分はかけるというスタンスと、LINE交換できた客を顧客として管理していくのが大きな特徴だ。
一人の販売員が持つ顧客は平均して200人、多い人で1000人だといい、年間1億円超を売り上げるスター販売員が生まれるようになった。また、16年から年間売上の10%が年収になるというスーパースターセールス制度を導入し、会社側からも奨励サポートとして後押ししている。
そもそも手厚い接客とは、一体誰のためのものなのか。この「友達感覚の接客」とは本来、お店とお客の間の信頼関係が前提になる。信頼関係の構築といっても一朝一夕にかなうものではない。そのせいか同店のグーグルによる口コミ接客レビューは総じて低評価で、手厳しいコメントが多い。
ネットの口コミレビュー投稿も「感謝」「応援」「不満」と分類してみると、「不満」コメントばかりが目立っている。ネット特性を加味しても、過去に飲酒接客でネット炎上したこともあって、手厚い接客が故のデメリットもあるのだろう。
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