売上高1000億円は達成できるのか アパレル業界の新星「TOKYO BASE」への懸念:磯部孝のアパレル最前線(3/4 ページ)
おしゃれ好きな若者をターゲットにアパレルショップを展開するTOKYO BASE。創業から16年で売上高191億円の企業に成長した。寡占化が進むアパレル業界の中にあって、最速で売上高1000億円を目指すという同社の歩みとこれからについて考えてみた。
「最速」達成に残された時間
冒頭にも触れた通り、日本製にこだわる高感度セレクトショップという業態でありながら、「最速で売上高1000億円」を目指すTOKYO BASE。上場企業の中で取り扱う商品価格が比較的近く、セレクトショップという業態で近いのはユナイテッドアローズだろう。
ユナイテッドアローズの創業は1989年で、創業から16年というと2007年となる。同社の07年時点での売上高は609億円(104店舗+EC)、売上高が1000億円に到達するのは、12年(186店舗+EC)なので、創業から23年かかっていることになる。TOKYO BASEは、あと7年以内に目標の売上高1000億円に到達しなければ「最速」の意味合いが薄れてくると思われる。
中国市場のトレンド変化
TOKYO BASEの海外進出は、17年の香港の路面店が1号店だ。現在、海外の店頭はEC含めて28店舗で、売上高は25億円ある。その海外市場の中で一番の存在感があるのが中国市場だ。
25店舗を運営し、売上高20億円のウェイトもある中国市場では、若者たちの間で「中国」と「潮流」を掛け合わせて中国の伝統文化に発想を得た「国潮(グオチャオ)」と呼ばれるトレンドがあり、外資アパレルのアディダス中国でも苦戦していると聞く。コムデギャルソンなど国境を越えて人気の高いハイエンドブランドには、あまり影響しないかもしれないが、もはや「日本産」や「日本発信」に過去ほどの優位性は無いと考えた方が良いだろう。
そうした事情は、百も承知しているのだろう。TOKYO BASEは、中国を華北、華東、華中、華南の気候に応じた地域別MDの構築にするという。これは中国市場に合わせたローカライズの一端と見るべきかもしれない。
中国国家統計局が発表した23年3月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比0.7%の伸びで、指数の伸びの鈍化は家計消費の盛り上がりに欠け、節約志向が根強いことを示唆している。直近でも中国の大型連休(労働節)の国内旅行者が、延べ2億7400万人とコロナ感染拡大前の19年同期比で19%増だったのに対して、観光収入は同0.6%増の1480億5600万元にとどまった。人数の増加幅と比べて伸び悩んでいることから、中国市場での売上の伸びが、どこまで伸ばせるのか。なかなか難しい環境ではないだろうか。
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