売上高1000億円は達成できるのか アパレル業界の新星「TOKYO BASE」への懸念:磯部孝のアパレル最前線(4/4 ページ)
おしゃれ好きな若者をターゲットにアパレルショップを展開するTOKYO BASE。創業から16年で売上高191億円の企業に成長した。寡占化が進むアパレル業界の中にあって、最速で売上高1000億円を目指すという同社の歩みとこれからについて考えてみた。
売上高1000億円は見直しが必要では
アローズやビームスなど、すっかり成熟してしまったショップで置いてあるPB商品は、どこか万人受けを狙ったようなものが目立つ。しかし、それはある意味、長年に渡るトライ&エラーの結果によるもので、彼らなりの最大公約数の結果とも考えられる。
一方、TOKYO BASEが扱う国内ブランドは、ブランドとしての個性を際立たせないと存在感も危ぶまれてしまうからこそ、エッジの効いた商品が多かったのだろう。そこにハード接客という、大人なセレクトショップでは当たり前の社会規範に沿った接客ルールとの違いによって成長してきた。
ファッションは否応なしに「時代」という大きな渦に巻き込まれるものだ。頼みの顧客も年齢とともに、生活や価値観が変わっていく。移り気でファッショントレンド好きな若者は、現在は古着と韓国トレンドに夢中だ。
「オシャレ」の定義に絶対などない。日本や東京にこだわった、商品展開は大きな差別化であり、長らく同質化と指摘される業界内にあって、個性であり武器にもなった。ただ、それはある意味で諸刃の剣でもある。
TOKYO BASEも創業16年。ファッショントレンドの潮流も創業当時から大きく変わり、日本を取り巻く世界情勢も絶えず変化している。「1%の顧客」狙いで売上高1000億円というスタンス自体、そろそろ見直してみる時期にきているのかもしれない。
著者プロフィール
磯部孝(いそべ たかし/ファッションビジネス・コンサルタント)
1967年生まれ。1988年広島会計学院卒業後、ベビー製造卸メーカー、国内アパレル会社にて衣料品の企画、生産、営業の実務を経験。
2003年ココベイ株式会社にて、大手流通チェーンや、ブランド、商社、大手アパレルメーカー向けにコンサルティングを手掛ける。
2009年上海進出を機に上海ココベイの業務と兼任、国内外に業務を広げた。(上海ココベイは現在は閉鎖)
2020年ココベイ株式会社の代表取締役社長に就任。現在は、講談社のWebマガジン『マネー現代』などで特集記事などを執筆。
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