「内定取り消された」投稿が物議 SNSで社名を晒すとどうなる? 法的リスクは:弁護士に聞く(1/3 ページ)
企業から「内定を取り消された」とする投稿がTwitterで注目を集めている。投稿者は社名の公開を示唆しているが、法的リスクはあるのか。労働法に詳しい弁護士に見解を聞いた。
「内定を取り消された」──企業からのメールとみられる画像とともに投稿された内容がTwitterで注目を集めている。日本労働組合総連合会(連合)は「取り消しは安易にできない」と指摘。ネットでは、内定取り消しの妥当性が議論の中心になっているが、別の論点もある。企業名の“SNS晒し”に法的リスクがあるかという点だ。
投稿者は「社名をさらそうかな」ともツイートしている。Twitterでも議論が分かれているが、企業名を明かした場合、投稿者は罪に問われるのか。労働法に詳しい佐藤みのり弁護士に聞いた。
「刑事、民事の両面から責任追及される可能性は否定できない」
──「内定を取り消された」とする投稿で企業名を「公開するべき」という意見も一定数ある。仮に企業名を伏せずにツイートした場合、どのような影響が投稿者に起こるか。
佐藤氏: 企業から個人宛てに送られてきたメッセージを、企業名が特定できる形で投稿すると、メッセージの内容によっては「企業の社会的評価を低下させた」として、投稿者が法的責任を問われる可能性がある。
今回、問題となっているメッセージは、内定取消に関するもの。法的には、内定をもらった時点で条件付きの労働契約が成立しており、内定を取り消すためには、解雇に匹敵するような事情が必要になる。
過去の裁判では、会社が内定を取り消せるのは「内定を出した時点で知ることができず、また知ることが期待できないような事実が後から判明し、内定を取り消すことが客観的に合理的と認められ、社会通念上相当と認められる事情がある場合に限る」とされている(最高裁1979年7月20日)。
今回、SNSに投稿された企業からのメッセージには、内定を取り消せるだけの事情は全く書かれておらず、企業によって不当に内定が取り消されたように読める。そのため、投稿者が仮に企業名を伏せずに投稿したとすれば、「公然と事実を示し、企業の社会的評価を下げた」として、企業側から刑事、民事の両面から責任追及される可能性は否定できないだろう。
なお、企業から送られてきたメッセージの表現に創作性がある場合、それを無断でSNSに投稿すると、著作権法上も違法となり、責任を問われることがある。本件の場合、企業のメッセージは定型的で事務的な内容であるため、著作物と認められず、著作権法上の問題は生じない可能性が高いだろう。
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