「内定取り消された」投稿が物議 SNSで社名を晒すとどうなる? 法的リスクは:弁護士に聞く(2/3 ページ)
企業から「内定を取り消された」とする投稿がTwitterで注目を集めている。投稿者は社名の公開を示唆しているが、法的リスクはあるのか。労働法に詳しい弁護士に見解を聞いた。
「企業名をさらしても、罪に問われる可能性低い」
──「刑事、民事の両面から責任追及される可能性は否定できない」とのことだが、実際に企業名をさらした場合、投稿者は罪に問われるか。罪になる場合、具体的にどのような罪に問われるか。
佐藤氏: 企業名をさらしたとしても、投稿者が罪に問われる可能性は低い。仮に問われるとしたら、名誉毀損罪が考えられる。
名誉毀損罪は「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した」場合に成立するが(刑法230条1項)、(1)公共の利害に関する事実について、(2)その目的が専ら公益を図ることにあった場合、(3)真実であることの証明があったときは、罰せられない(刑法230条の2第1項)。
本件は、(1)企業が不当な内定取消をした事実を公にしたものであり、広く国民に開示されることで、公共の利益が増進される面がある。また、(2)投稿した主たる目的が、「企業への報復」など私的なものであれば、目的の公益性は認められないが「今後の求職者への注意喚起」などであれば公益性が認められるだろう。そして、(3)投稿した内容は真実である可能性が高く、投稿者が名誉毀損罪に問われる可能性は低いように思う。
しかも、名誉毀損罪は親告罪であり、被害者側、すなわち本件でいえば企業側からの告訴がなければ罪に問われることはない。企業としては、不当な内定取消が真実であるならば、それを公にされたとしても告訴しないのではないか。告訴すると、社会的非難を浴びる可能性が非常に高いだろう。
企業が提訴しても「賠償責任が否定される可能性高い」
──社名をさらされた企業が情報開示請求で投稿者を特定し、投稿者を提訴する可能性はあるか。その場合、企業に勝算はあるか。
佐藤氏: 企業が投稿者を特定し、名誉毀損(きそん)などを理由に、民事裁判で投稿者を訴える可能性を否定することはできない。しかし、先述したように、自ら不当な内定取消をしていたのだとしたら、それを公にされたことを理由に訴訟を提起するのは現実的ではないように思う。投稿者を訴え、公の法廷で争うことになれば、企業に対する社会的非難は免れず、マイナスが大きいだろう。
仮に訴訟で争ったとしても、投稿の公共性、公益目的、真実性が認められ、賠償責任が否定される可能性も高い。
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