リプトン ミルクティー、わずか1年で「元の味に戻します」 なぜ、異例の判断をしたのか?:667件のご意見(3/3 ページ)
2023年3月、森永乳業は1年前に刷新した「リプトン ミルクティー」を元の味に戻すという異例の判断をした。その背景にはどのような出来事や葛藤があったのか? 森永乳業の担当者に取材した。
リプトン ミルクティー、元に戻します
新商品は初速が重要となる。特に飲料市場などのレッドオーシャンではなおさらだ。市場にいち早く浸透させ、丁寧にファンを増やしていく販売戦略やコミュニケーション戦略の策定と実行を着実に進めていかなくてはいけないだろう。
そのような重要な時期に「元に戻すのか、新商品で行くのか、リプトン ロイヤルミルクティーをさらにリニューアルするのか」といった難解な意思決定を迫られていた。最終的に、リプトン ミルクティー復活を望む声が多かったことを踏まえ、元に戻すことにした。
「正直、いろいろな感情や思いがよぎりましたね。意を決してリニューアルしたのに元に戻すのって正直かっこわるいじゃないですか。そういう気持ちもあったのですが、やっぱり顧客が本当に求めている、望んでいることとは何か? を考えて戻す方向に舵を切りました」
667通のラブレター、復活PR動画を公開
戻すという異例の意思決定のあとの最初の仕事は、ファンへの情報発信だった。森永乳業はお客様相談室に届いた667件のご意見を盛り込んだ、オリジナル短編アニメーション動画「667通のラブレター」を作成し、公開した。
「元に戻すという意思決定を後押ししてくださったのは、顧客の声でした。それが、わたしたちには『愛』に感じたんですよね。なので、元に戻すお知らせを出す際には、顧客の声からつくったプロモーションにしたいという思いがありました」(宇田川さん)
動画内のセリフや役名などいたるところにリプトンに関連する要素を散りばめた。作中で流れる歌詞は、お客様相談室に届けられた声から書き下ろされた。リプトン ミルクティーがどれほど愛されているかがよく伝わるプロモーション動画となり、消費者に届けられた。
リプトン ミルクティー復活の反響も大きく、中容量サイズ(450ミリリットル)の売り上げは、計画比2倍で推移しているという(6月末時点)。「復活ありがとうございます」という感謝の声もお客様相談室に続々と届いた。
宇田川さんは今回のリニューアルと異例の意思決定を振り返り、今後の商品開発への学びとして以下のように締めくくった。
「ロングセラー商品になればなるほど、定量調査だけでは見落としてしまうヘビーユーザーの思いがあるのだと気付かされました。味に関しては、今まで以上に慎重に決めていくというのが一番の学びでしょうか。実際に飲んでくださっている顧客の表情や反応を見ずに、数字だけで意思決定するのは失敗につながりかねません」
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