「旅行の代わり」にあらず ホテルのサブスクがコロナ後も新規客を獲得できるワケ:グッドパッチとUXの話をしようか(1/4 ページ)
コロナ禍に「旅行の代わり」として需要を取り込んだホテルのサブスク。旅行が解禁になった現在もその人気は衰えず、今後も成長が期待できる。人気の理由をUX観点から解説。
連載:グッドパッチとUXの話をしようか
「あの商品はどうして人気?」「あのブームはなぜ起きた?」その裏側にはユーザーの心を掴む仕掛けがある──。この連載では、アプリやサービスのユーザー体験(UX)を考える専門家、グッドパッチのUXデザイナーが今話題のサービスやプロダクトをUXの視点で解説。マーケティングにも生きる、UXの心得をお届けします。
昨今、NetflixやSpotifyなどさまざまなサブスクリプション型のサービスが世の中にあふれていますが、皆さんは「ホテルのサブスク」と聞いてピンと来るでしょうか。
「え、定額でホテルに泊まり放題?」と驚く方もいるかもしれませんが、最近では、東急が「Tsugi Tsugi」と呼ばれる定額制の回遊型住み替えサービスを事業化するなど、市場の伸びが期待される分野です。
ホテルのサブスクが注目された背景には「新型コロナウイルスでの旅行需要の落ち込み」があります。落ち込んだ需要を回復させたかったホテル側の事情と「旅行ができなくとも、自宅や近所で贅沢(ぜいたく)したい」という生活者のニーズがかみ合ったわけです。私自身も、せめて旅行の気分だけでもと「HafH(ハフ)」というサービスに登録しました。
さて、時は流れて今は旅行の制限もなくなりましたが、HafHの会員数は伸び続けており、4万人に達する勢いです。
もちろん、旅行を目的にこうしたサブスクに登録する方もいると思いますが、サービスの特性を考えると、そうではなく「気軽にホテルに泊まれる」ことを魅力に感じている方が多いのでしょう。HafHの公式Webサイトにある利用者の声を見ても、旅行ではなく、普段使いのような形で近場のホテルに泊まるケースが多いことが分かります。
こう見ると、ホテルのサブスクは「ホテルの新たな使い方を生み出した」とも言えそうですが、人気の秘けつはどこにあるのでしょうか。この記事では「ユーザー体験(UX)」の観点からその理由を考察していきます。
蜜月関係にある「ホカンス」と「サブスク」
関連記事
- 10年で市場規模が10倍に 「アナログレコード」復活の理由をUX観点から考える
サブスクサービスで音楽を聴くことが増えてきましたが、意外なことにここ10年で「アナログレコード」の市場は10倍に成長しています。なぜアナログレコードが人気なのでしょうか、その秘密をUXの観点から考えてみました。 - サントリーの「ビアボール」 ビール離れ進む若者の間で話題に、なぜ?
ここ15年以上「前年割れ」を記録しているビール市場で、サントリーの新ビール「ビアボール」が、若者の人気を集めている。どのようにこの熱狂が作られたのかというと…… - なぜ人は「ゼルダの伝説」にハマるのか? マリオのユーザー体験と比較して分かったこと
5月12日に発売された「ゼルダの伝説」の最新作が、発売たった3日で世界販売本数1000万本を突破した。30年以上も愛されるゲームの魅力とはなにか? なぜ人は「ゼルダの伝説」にハマるのか? ユーザー体験(UX)の観点からひも解いていく。 - 2カ月で1億人が使った「ChatGPT」 なぜここまで流行ったのか、UX観点から解説
今、AIに関する最もホットな話題である「ChatGPT」は2カ月で1億人が利用したモンスターサービスだ。なぜここまで流行ったのか、UXの観点で考えるとおもしろいことが分かってきた。 - 楽天・PayPayに続く経済圏となるか SMBCグループの「Olive」が伸びそうな2つの理由
三井住友フィナンシャルグループが3月に発売した、コンシューマー向けの金融統合サービス「Olive」が話題になっている。マーケティング支援会社のシンクジャムが「Olive」が伸びそうな2つの理由を解説。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.