阿波おどりの“1万5000円”VIP席が物議、100万円でも完売した青森ねぶた祭と異なる3つのポイント:踊らにゃそんそん(4/4 ページ)
徳島市の夏の風物詩、阿波おどり。400年の歴史を持つとされ、新型コロナウイルスの流行前には国内外から100万人を超える観光客訪れる一大イベントです。2023年は8月11〜15日に開催予定で、新たに特別観覧席(VIP席)の設置が発表されました。
顧客視点に立ったプライシングが評価の分かれ道
今回は阿波おどりと青森ねぶた祭を取り上げて、両者のプライシング戦略をみてきました。青森ねぶた祭では「誰」に「何」を「いくら」で「なぜ」売りたいかが明確に整理されており、その結果一般的には破格ともいえるような高額席でも顧客の納得感を得て完売という結果につながっていました。
6月末には、阿波おどりで新たに20万円のVIP席が販売されることが発表されました。このVIP席はインバウンド向けとターゲットが明確に定められており、提供数は1公演あたり全20席限定。食事や踊り連の解説付きという価値が盛り込まれています。
インバウンド客に打ち出したメッセージは、「阿波おどりという400年以上続く歴史と伝統を誇る祭りを、持続可能な形で存続し、発展させることに寄与」し、外国人観光客に魅力的な日本の体験を味わってほしいという、共感を誘うものでした。
少なくとも1万5000円のVIP席に比べるとプライシングにおける重要な要素が整理され、顧客視点でのコミュニケーションに意識が向いている印象を受けます。
今回の例によらず、適切なプライシングには「誰」「何」「いくら」の三拍子が顧客の視点で整理されていることが重要です。「誰」が主語になるかによって、商品やサービスへのニーズや求めるクオリティーは変わってきます。企業は顧客にとって何が価値になり、それにどこまで応えるのかを検討したうえで、顧客の支払い意思を分析して初めて、納得感のある価格設定ができるのです。
さらに「なぜ」その価格で販売するのか、顧客に寄り添ったコミュニケーションができれば、プライシングの成功はより確実なものとなるでしょう。
著者プロフィール
高橋嘉尋(たかはしよしひろ)
プライシングスタジオ代表取締役社長。
これまでリクルートをはじめとする大手企業から、「money forward」など中小企業まで数十サービスの価格決定を支援。
また、公的機関、学会、雑誌などへのプライシングに関する論文提出や講演会、寄稿などを通じ、プライシングに対するノウハウを積極的に発信。
プライシング専門メディア【プライスハック】監修。
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