ファミマ、リテールメディア活用で購買率2倍に 500億円かけた「逆襲」:社長が明かす(2/2 ページ)
ファミリーマートは7月7日、「リアルリテールの逆襲」と銘打ったデジタル戦略発表会を開催した。「本気度」がうかがえるその戦略とは。
「デジタル広告×デジタルサイネージ」で購買率は約2倍に
ファミリーマートは自社アプリのファミペイを「カスタマーリンクプラットフォームの中核」と位置付ける。
ファミペイは、新商品情報やクーポンといった「販促機能」と、回数券やスタンプカードといった「ロイヤルティー向上機能」を備えている。これらを顧客一人一人に最適な形で展開することで、ファミリーマートのファン化および店舗への送客を目指す。
リアル店舗における購買データの、広告配信・効果検証への利活用にも注力する。
ファミペイは現在までに1500万ユーザーにダウンロードされている。これに加え、ターゲティング広告に活用できるdポイント会員を合計すると、3000万件超のIDを持つことになる。
これらのIDは購買データとひも付いており、顧客の属性に合わせて細分化した広告コンテンツを出し分けられるため、より精度の高い販促施策を実行できる。
デジタル広告と、店頭に設置したデジタルサイネージの相乗効果にも期待を寄せる。両方の媒体に接触した顧客の購買率は、片方のみ接触した顧客と比べて約2倍高いという。デジタルサイネージは現時点で約4600店舗に設置しており、12月末までに1万店舗に拡大する予定だ。
「人を呼び寄せるサイネージ」へ
デジタルサイネージの設置と広告配信を手掛けるゲート・ワン(東京都港区)取締役の速水大剛氏は「『人を待つサイネージ』から『人を呼びよせるサイネージ』へ」と展望を話した。
ファミリーマートのデジタルサイネージは広告だけでなく独自番組も配信し、店舗体験を「より楽しく」することを目指している。
実際にデジタルサイネージを設置した店舗では、レジに並ぶ来店客が待ち時間に映像を見ることで暇をつぶせるため、対応するスタッフの精神的負担が軽減するといった副次的な効果もあったという。
人気アーティストの書き下ろし楽曲を独自配信した際には、映像を見るために多くのファンが訪れるというこれまでになかった効果も確認された。
細見社長は、本発表会を「リアルリテールの逆襲」と銘打った理由についてこう説明する。「過去10年でECが伸長し、リアル店舗の役割が少なくなったと言われ続けてきた。そうした中で米ウォルマートはデジタルを駆使したリアル店舗を再定義し、成功を収めている。われわれも同様に『リアル店舗もやられっぱなしじゃないよ』という意味を込めた」。
店舗内の空間、アプリ、デジタルサイネージ。それらの顧客接点を組み合わせ、新たな顧客体験価値の創出を目指すファミリーマートのリテールメディア。多額の投資は実を結ぶか。
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