リスキリング施策は「きれいごと化」しがち 本当に効果のある「3つの学び」とは(1/2 ページ)
リスキリングの取り組みが加速しているが、しばしば現実味のない議論もみられる。調査では、本当に効果がある「3つの学び」が
この記事は、パーソル総合研究所が9月1日に掲載した「従業員のリスキリングを支える『3つの学び』とは」に、編集を加えて転載したものです(無断転載禁止)。
リスキリングの取り組みが加速している。しかし、政策議論においても経営的な議論においても「リスキリング」という用語はあまりにも抽象度が高く、往々にして現場のリアリティーが欠けがちだ。
パーソル総合研究所では、リスキリングについての定量的な調査「リスキリングとアンラーニングについての定量調査」 を実施。本コラムでは、そこから得られたリスキリングに関連する3つの具体的な学び行動についてのデータを紹介し、議論の底上げを図りたい。
空疎に響く「リスキリング」議論
今、多くの場で「リスキリング」についての議論が盛り上がっている。大手企業を中心に取り組みが活性化し、メディアでの報道も増えてきたことに加え、政府も企業の人材投資を一層後押しする構えを見せている。
人材開発やHRM(Human Resource Management=人材マネジメント)業界においてもその言葉を聞かない日はなくなったともいえる「リスキリング」だが、このコンセプトは、もともと学術研究で用いられてきた概念というよりも、2018年のダボス会議にて提議され広がった一般語である。そのため定義は緩やかであり「新しいスキルを獲得する(させる)」というくらいの意味合いですでに広く使われている。
しかし、その抽象的かつ広い意味合いのせいか、リスキリングの議論はしばしば机上の空論としか呼びようのない、現実味のないものになる。リスキリングについての報道や議論のほとんどは「必要なスキルを明確化し」→「そのスキルを新たに身につけて」→「ジョブ(ポスト)とマッチングする」という線的で単純な発想を有している。
変化の激しい時代において、デジタル領域を中心とした新しいスキルを獲得し、来たるべきジョブ・チェンジに備えるというのは大筋としては分かるものの、社会人領域の学びという伝統的話題に対してさほど新しいものを付け加えないし、これまで蓄積されてきた学習にまつわる多くの社会科学的知見が生かされているようにも見えない。
さらに、現在の「リスキリング」は「DX(デジタル・トランスフォーメーション)」というさらに混迷を極めるバズワードとひも付いてしまう。リスキリングのために「まずはDX戦略を明確化し」「DX人材像を明確化することが必要だ」といわれる。しかしこの時点で、リスキリングの議論はほとんど「教科書的なきれいごと」へと落ちていく。
日本企業において、人材像を技術レベルまで明確化し、必要なヘッドカウントを数えられるほど具体的に定まったDX戦略など、ほとんどない実態があるためだ。デジタルを活用したビジネスモデルの非連続的発展という極めてイノベーティブな経営行動において、手探り状態の企業群にそれを求めるのはかなりの高難度であろう。
一方で「リスキリング」の抽象度を下げ、より具体的な従業員の行動へと落とし込んでいくことはまだまだ可能だ。「学び直し」や「スキルの再獲得」といった言葉で丸められがちなリスキリングの議論を、もう少し粒度の細かいリアリティーを持たせていくことができれば、多くの施策のヒントは見つかっていくかもしれない。
そこで、パーソル総合研究所では、定量調査を実施。リスキリングと関連している、より具体的な学び行動を探索した。
「リスキリング」を支える3つの学び行動
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