ヒットした大作『FF16』 厳しい意見が目立つ なぜ(2/4 ページ)
人気ゲーム『ファイナルファンタジー16』(FF16)の発売から1カ月が経過。世界出荷数は300万本と結果は出したものの、一部では売れ行きが低調という報道も。なぜ厳しい目で見られるのか。背景を考えてる。
FFの色合い強く
FFの本編シリーズは、オンラインゲームも含めて遊んでいて、開発者の方々に取材する機会にも恵まれましたから、最新作がどうなのか楽しみにしていました。
実際に遊ぶと、まずアクション要素の強い戦闘システムが新鮮でした。シリーズで存在感が薄くなっていた「召喚獣」の存在が際立ち、シリーズでおなじみのキャラクター名「シド」の使い方も見事で、セーブ画面では懐かしい2等身キャラが登場。今まで以上に過去シリーズを意識したであろう演出が多くあり、FFの色合いを強く感じる作品でした。
そしてストーリーも重厚で、改革者(主人公)が庶民に歓迎されるとは限らないこと、社会的地位の低い奴隷階級「ベアラー」は考えさせられるものがありました。社会への皮肉めいたものがあるのも、FFらしく、パンチが効いていました。
同時に、ゲームのトレンドが「自由度の高さ」にあるので、誰でも分かる一本道のRPGが、一部から批判の対象になるとも思いました。一本道のRPGにも、広い世界を自由に探索して選択肢の多いオープンワールドタイプのRPGにも、それぞれ持ち味はあるのですが、前者は何かと批判されやすいのは確かです。
ちなみに私が実際にプレーを始めると、FFシリーズ未経験の妻が、興味本位で鑑賞。「次の展開はどうなるの?」と質問し、先に進めようとすると「(私が)見たいからちょっと待って」などと言って中断させられたりしました。
主要キャラクターの運命が気になるようで、私が仕事をしていると、妻が「今はFFをやらないの?(←先が気になるから早くゲームを進めろ……という意味)」などと催促されたりしました。そんなに気になるなら、自分で遊んだら?と思うのですが、「見ているのが楽しい」のだそうです(自分で遊ぶ方がもっと楽しいと思うのですが)。
FF16は国家の興亡が描かれ、多くの登場キャラがいますから、固有名詞が多すぎて人によっては理解が難しいこともあるでしょう。しかしそこは親切設計で、いつでも用語の説明が見られたり、後半になると複雑になった世界情勢の解説もあります。次に行く場所も表示されるし、ゲームで迷うことがありませんでした。
一方ネットではいろいろな意見がありますが、強めの批判……特にストーリーについて、理解しづらい、整合性に欠ける、お使いの要素ばかり……という意見を見かけました。戦闘システムもアクションの要素が強すぎる……という疑問も目にしました。
ネットの感情「ポジティブ」60%台
どのコンテンツでも「全員が絶賛」ということはありえませんが、「肯定」「否定」の比率は気になるもの。そこでFF16は「肯定」「否定」のどちらが多いのか、他の人気コンテンツと比べてどうなのかを調べてみました。
ヤフージャパンのサービス「リアルタイム検索」(7月30日時点からさかのぼって30日間)で、「FF16」のワードを打ち込んで検索すると、感情「ポジティブ」の割合は、64%台でした。ゲームファンから評価が高いとされるゲーム『ゼルダの伝説』の「ポジティブ」は75%で「さすが」といったところ。そして『ポケモンスリープ』は68%でした。
ゲームではありませんが、現在公開中の宮崎駿監督のアニメ映画『君たちはどう生きるか』は、メディアでは「評判は賛否両論」と報じられていますが、「ポジティブ」は87%。人気テレビアニメ『推しの子』と『水星の魔女』はそれぞれ67%でした。
大河ドラマ「どうする家康」は「ポジティブ」が36%ですが、これは従来の徳川家康のイメージに捕らわれない意欲作で、視聴者が突っ込みたくなる要素があるからでしょうか。
FF16は、「ポジティブ」が極端に高いわけではないものの、さりとて低いわけでもないのです。要するに、イメージとデータは必ずしも合致しないということです。
ゲームに限らず、アニメでも、ストーリーについてはプレーヤーや視聴者の「好み」があります。個人がSNSで情報を発信する時代であり、肯定的な意見よりも、批判的な話のほうが面白がられます。「他人の不幸は蜜の味」という感じでしょうか。
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