ヒットした大作『FF16』 厳しい意見が目立つ なぜ(3/4 ページ)
人気ゲーム『ファイナルファンタジー16』(FF16)の発売から1カ月が経過。世界出荷数は300万本と結果は出したものの、一部では売れ行きが低調という報道も。なぜ厳しい目で見られるのか。背景を考えてる。
出荷数で批判できる「からくり」
FF16は、ゲーム内容だけでなく、出荷数でもやりようによっては「売れない」と批判できる面がありました。
PS5本体の世界累計出荷数が約4000万台で、FF16のソフトの出荷数が300万本ならば、所有者の約7.5%が買った計算になります。現時点でこの割合は、ゲームビジネスをある程度理解する人ならば“合格点”を出すでしょうが、あえて無視することもできます。
そして、FF16の出荷数に「ダメ出し」をするのであれば、日本のパッケージソフトの初週出荷数(約33万本=ファミ通調べ)などを取り上げて、それを根拠に「売れなかった」などとすれば良いのです。他にもニンテンドースイッチの人気ゲームと比べて、「パッケージソフトの販売数が少ない」というのもそうですね。
確かに、歴代のFFシリーズにおける日本国内のパッケージソフトの販売数を取り上げていくと、低下傾向にあるのは事実です。しかし、それはダウンロード販売の比率が高まっていることもあり、海外市場が重要になっています。
もちろん日本市場も重要ではありますが、そういっても「最重要」ではなくなりつつあります。にもかかわらず日本市場だけを見て、さらにごく一部のデータ(パッケージソフトの販売データ)だけをわざわざ抽出して話をする意味があるのか疑問は残ります。
特にFF16は、PS5の独占販売期間(6カ月)の後で、何かの動きがあることが考えられます(何もしないのであれば、経営視点では相当の疑問です)。現時点の「世界出荷数300万本」は想定の範囲内ですし、最大商戦期の年末年始の動きを見て判断したいところです。
過去シリーズでも批判 でも売れる
そしてFFシリーズを振り返ると、常に何かしらの批判をされてきた経緯があります。同時に批判を浴びながらも、売れ続けています。本編シリーズ最新作が発表されたらニュースとして話題になり、ヤフートピックスにも採用されます。シリーズ累計出荷数でも、1億8000万本以上という揺るがぬ実績があるのです。
PS2の本体普及を後押しした『FF10』も、キスシーンなどが当時、一部で気持ち悪いなどと批判を浴びました。さらに続編の『FF10-2』も売れたのですが、女性キャラがメインで「ギャルゲー」などという意地悪な意見もありました。
オンラインゲームに挑んだ『FF11』も、当時は少なかったパッケージソフトの出荷数が批判されました。同作は、ゲームを遊ぶための月額利用料金がポイントで、企業の収益に長年にわたって寄与するのですが、その点が当時はなかなか理解されなかったのです。
『FF12』も、主人公の影の薄さ、フィールドの大きさが適当でないなどと指摘され、『FF13』もストーリーや世界観が分かりづらいと批判されました。
オンラインゲームの『FF14』は、最初はゲームの完成度が低く、経営陣が会見で陳謝する事態になりました。(その後、ゲームをまるごと作り直して立て直し、ゲーム業界関係者らを驚かせました)。
『FF15』はゲームソフトの開発に手間取って発売がかなり遅れたことも、さらにストーリーもわかりづらいと批判されました。しかし約5年かけて出荷数は1000万本を突破しました。
要するに、やたらと批判はされるが、常に結果を出す(売れる)というのがFFの歴史です。裏返せば、目立つ批判の声は、遊ぶ人が多く「売れるゲームの証」とも言えます。本当にダメで売れないゲームであれば、遊ぶ人が少ないわけで、批判の数も少なく、ネタにもならないからです。
振り返って考えられるのは、FFシリーズは、ゲーマーが気軽に意見をしやすい、言いやすい環境にあるというのは、あるかもしれません。作品はどれも先鋭的で、何かと挑戦的なことをしてきた歴史があります。エッジが立っている作品は、どうしても自分の好みに合わないところが出るわけで、SNSという発信ツールがある以上、意見をしたくなるのは自然の流れなのかもしれません。
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