任天堂の決算で『ゼルダの伝説』の影響はどのくらい大きい? 映画『マリオ』は?(2/3 ページ)
任天堂の2023年4〜6月期連結決算が発表され、過去最高益を記録した。主な要因は『ゼルダの伝説』シリーズ新作の売り上げだが、映画『マリオ』への言及が控えめだ。その理由とは。
映画ビジネスの収益 “小粒”なのは
一方、世界の興収が13億ドル(約1850億円、1ドル142円換算)を突破したアニメ映画『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』。文句なしの大ヒットなのに、任天堂の決算を見ると、映画のヒットで直接的に「もうかった」というトーンではありません。
任天堂の決算で、同作の業績は「モバイル・IP関連収入等」に入りますが、売上高は318億円。前年同期比で見ると約200億円の増加ではあるのですが、『ゼルダの伝説』の金額を見た後では、正直“小粒”に見えてしまいます。
これは映画のビジネスモデルが関係しています。興収は、上映した映画館とも収益を分け合うもの。さらにユニバーサル・ピクチャーズとの共同出資なので、どうしても任天堂の「取り分」は減るのです。
2016年に「ポケモンGO」の大ヒットを受けて、任天堂の株価が急伸したものの、任天堂が正直に「影響は限定的」と発表したとたん、株価が急落したことがあります。今回は株価とは関係ないものの、任天堂のコンテンツがあまりにも有名なために、市場が勝手に「かなりもうかってる!」と判断するという意味では、よく似ています。
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そして任天堂の狙いは、配給の収益よりも、コンテンツ(マリオ)の接触をより多くの層に広げること。そのため、決算でも「マリオ関連タイトルが好調に推移したことに加え……」と、丁寧に説明しているのです。
ビジネスでは大きなリスクを負うことで、大きなリターン(収益)が得られるのです。何より共同出資は、一種のリスク回避だからです。
得意分野のゲームビジネスで勝負
むしろ、「リスクを負う」という意味では、任天堂はゲームビジネスで勝負(巨額の投資)をしています。そこで成功したからこそ、ここ数年極めて高い収益をたたき出しているのです。
1980年代に家庭用ゲーム機「ファミリーコンピュータ」で成功し、高収益のゲームビジネスを設計。一時期はソニーに王座を奪われたものの、新しいコンセプトのゲーム機で復活(ニンテンドーDSとWii)。そして無料のスマートフォン用ゲームに苦しめられた時期があるものの、立て直して今に至るわけです。
むしろ、世界的に大ヒットした映画の興収と比べても、さほど遜色ないような金額を『ゼルダの伝説』のワン・タイトルでたたき出した……ということもできます。今までのゼルダの伝説も十分な人気ゲームでしたが、売り上げを見ての通り、桁違いのパワーアップをしています。
ゲームソフトのビジネスは、コスト(開発費)と売り上げが均衡する「採算分岐点」を超えたら、そこから先は、売上高の大半が利益になります。大ヒットのゲームソフトは「お札を刷っている」といわれるのもそのためです。
任天堂の第1四半期決算で、本業のもうけを示す営業利益は約1854億円でした。果たしてゼルダの伝説が、営業利益の中で占める割合は、いったいどのくらいなのでしょうか……。大変興味深いところです。
ゲームビジネスは大きなリスクはあるものの、ヒットをすれば莫大なリターンがあるのです。他のエンタメ産業などが、ゲームビジネスに参入している背景はそのためです。
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