ベンチャー航空「トキエア」 “したたか”な戦略も、就航延期を繰り返すワケ:宮武和多哉の「乗りもの」から読み解く(3/4 ページ)
航空会社「トキエア」が新潟空港〜札幌・丘珠空港で同社初の航路を開設する。その戦略は非常に“したたか”だが、何度も就航延期を繰り返す。背景には深い事情がある……。
なぜ就航が遅れた? 背景に2つの理由
トキエアの就航は、新潟県の政財界の期待とは裏腹に、当初の予定であった22年秋から、4度の延期を経て、現在は「23年8月末ごろ」としている。この就航延期には、ベンチャー系・新規参入のトキエアならではの事情も絡み、同情せざるを得ない面もある。
トキエアが会社法人を設立した20年7月は世界全体がコロナ禍による景気減速の真っただ中。資金調達の難航や、機体リースの交渉相手(ノルディック・アビエーション・キャピタル社)の破産申請などで冷や汗をかく羽目となった。
しかしコロナ禍の中でも、「大光銀行」や「福田組」「エコー金属」など県内主要企業の融資を受け、22年秋には45億円の資金を調達。その後も運航延期や原油高で追加資金が必要となり、新潟県や日本政策金融公庫などからの融資で何とか乗り切っている。
一方で、新潟県のお隣・富山県で設立された地域航空「ジェイ・キャス」は、コロナ禍で資金が集まらず、当初の目標であった21年度の参入を延期している。トキエアが辛うじてなしえた「航空準備会社→航空会社への脱皮」は、かなり難関なのだ。
資金面をクリアできたものの、最後の難関「最終的な許可を国からもらう」が立ちはだかる。既存の大手航空会社傘下ではない新規参入組ということもあり、トキエアへの審査の目はどうしても厳しくなってしまうのだ。
23年6月から8月への延期理由は「路線訓練などにおいて、一層の習熟に時間を要する」(新潟空港地上スタッフ・航空局との調整遅れ)、さらに8月末の延期は「路線開設に必要な国の飛行検査が遅れたため」――。習熟訓練や国の審査の遅れが、そのまま就航延期につながっていることがうかがえる。さらに、台風7号の影響で8月15日と16日に予定していた乗員の訓練飛行は中止に。さらなる延期の可能性も出てきた。
また、あくまでも推測だが、トキエアの新潟空港〜丘珠空港間の距離(約400マイル弱)は、ATR社製のプロペラ機の航路としては国内最長クラスだ。同程度の距離がある伊丹空港〜屋久島空港間の航路(403マイル)と違って、両空港とも冬場は雪との闘いとなる。前例がまだなく、安全に関する審査が厳しくなるのは、仕方がないかもしれない。
現状のトキエアは、機体のリース料はかかり、運賃収入はゼロ。副業のカフェやグッズ売り上げ頼みという苦しい状態が続いている。しかし、最終段階の実証飛行を7月27日から開始。かつ、新潟県内シェア第1位の地銀「第四北越銀行」が融資への動きを見せるなど、ようやくポジティブな要素がそろってきた。まだ正式なアナウンスはないが、8月末の就航を信じて待ちたい。
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