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ベンチャー航空「トキエア」 “したたか”な戦略も、就航延期を繰り返すワケ:宮武和多哉の「乗りもの」から読み解く(2/4 ページ)
航空会社「トキエア」が新潟空港〜札幌・丘珠空港で同社初の航路を開設する。その戦略は非常に“したたか”だが、何度も就航延期を繰り返す。背景には深い事情がある……。
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「プロペラ機」で経費節約 「貨物対応」で販路拡大
トキエアの機体「ATR72−600」(欧州・ATR社製)は、プロペラ機の中でも燃費が良くCO2消費も少ない「ターボプロップ機」だ。同程度の小型ジェット機より機体の体積が小さく、「空港での着陸料」(6割程度の減免が見込まれている)、「降雪時のアンチアイシング」(雪を取り除き、防除雪氷液を吹き付ける作業)経費」など、コストを大幅に削減できる。ローコストな経営体制は、おトクな運賃を維持できる原動力にもなるだろう。
トキエアの2機のうち1機は、客室前方の座席を取り外し、貨物搭載用コンテナを最大4つ設置できるという。「フレイタ―機」(貨物輸送機)を別に準備することなく、1機を「前側は貨物、後ろ側は客席」状態で運用できるのだ。トラックや貨物船よりも早く、揺れが少ない「トキエアの航空貨物」は、さまざまな新潟県産品の出荷に十分に活用できるだろう。
新潟県内には世界のトップシェアを維持する工業製品を生産するメーカーが数多い。輸送時の揺れに細心の注意が必要な製品は、高速道路で上越国境の山岳部を走るトラックより、航空輸送の方が向いている場合もある。
トキエアは既に、工業製品の輸送ノウハウを持つ県内大手物流「ツバメロジス」と提携しており、集荷から空路輸送まで「より早く、より丁寧に」輸送できる体制を整えている。
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