ベンチャー航空「トキエア」 “したたか”な戦略も、就航延期を繰り返すワケ:宮武和多哉の「乗りもの」から読み解く(1/4 ページ)
航空会社「トキエア」が新潟空港〜札幌・丘珠空港で同社初の航路を開設する。その戦略は非常に“したたか”だが、何度も就航延期を繰り返す。背景には深い事情がある……。
新連載・宮武和多哉の「乗りもの」から読み解く:
乗り物全般ライターの宮武和多哉氏が、「鉄道」「路線バス」「フェリー」などさまざまな乗りもののトレンドを解説する。
航空会社「トキエア」が2023年8月に、新潟空港〜札幌・丘珠空港で同社初の航路を開設する。大手航空会社の傘下に属していない、ベンチャー系の航空会社が国内の旅客航路に新規参入するのは14年ぶりのことだ。
同社は日本海側の新潟空港を拠点に置き、仙台空港・中部国際空港(セントレア)、神戸空港への航路開設も予定。24年度には世界遺産認定によってインバウンドの増加が見込まれる佐渡島(佐渡空港)への就航も予定している。
「他社と違う」 トキエアのしたたかな戦略
トキエアが旅客便のために準備した2機のプロペラ機は、ANA・JALなど大手航空会社の主力であるジェット機に比べると、座席の数は半分か三分の一ほど。しかし料金は大手より格段に安く、座席はLCCより広く快適な「ハイブリッド地域航空」を目指すという。
機材(機体)選定、航路の展開・サービスなどから読み取れる“したたか”なトキエアの戦略を見てみよう。
航路設定が“したたか”
トキエアが就航する航路は、大手や中堅と同じように見せかけて、きっちりすみ分けている。
例えば北海道で同社が発着する「丘珠空港」は、札幌市中心部への距離が8キロほど。札幌市地下鉄・栄町駅から近く、正面玄関からちょっと歩いただけで飛行機に乗れるなど、小規模な空港ならではのメリットも大きい。
一方でANA・JALの拠点「新千歳空港」は札幌市中心部から30キロ以上離れた千歳市にあり、JR新千歳空港駅からの徒歩距離も長い。何より丘珠空港は滑走路が1500メートルしかなく、冬場のジェット機乗り入れが難しい=競争相手が入りづらい、という利点もある。
他にも、名古屋ではFDA(フジドリームエアラインズ)の拠点「名古屋飛行場(小牧空港)」ではなく「中部国際空港」(セントレア)に発着。神戸ではFDAが撤退・季節運航化した航路を担う。仙台に至っては空路・陸路ともに目立ったライバルがいない。
新潟県から県外への移動で最も太い動線である「首都圏(東京方面)への移動」では、飛行機は上越新幹線にまず勝てない。新潟空港を拠点とするトキエアは、今後とも、競争の少ない「新潟空港⇔地方都市」航路を見いだし、勢力を拡大していくことになるだろう。
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