食べ物なのに「鮭 ひろし」 独特なネーミングセンスのきっかけは「ゆかり」だった:経済の「雑学」(2/2 ページ)
三島食品(広島市)は、「ゆかり」「かおり」「あかり」「ひろし」など、まるで人の名前のような商品を展開しています。なぜ、食品にこうした名前を採用しているのでしょうか? 同社広報の新宅智彦さんに聞きました。
SNSでバズった「三姉妹」
ユニークな名前の商品が生まれたきっかけは、1970年に発売した赤しそのふりかけ「ゆかり」までさかのぼります。
「『ゆかり』は、古今和歌集で『縁あるもの』『ゆかりあるもの』として紫草(むらさき)が詠まれていたこと、お客さまのとの縁を大切にしたいという思いから命名されました」(新宅さん)。三文字で覚えやすく、漢字より柔らかさを感じる平仮名表記を踏襲して、84年に青じそふりかけ「かおり」、2010年にピリ辛たらこのふりかけ「あかり」を発売。新宅さんによると、当時の社内では「人の名前のようだ」という意識はなかったそうです。
転機が訪れたのは17年。SNS上で「人の名前だと思った」というツイートが注目を集め、翌18年には「ゆかり」「かおり」「あかり」が「三姉妹」と呼ばれるようになりました。そこで初めて、同社内でも人の名前として意識するようになりました。これ以降に発売した商品は、あえて人の名前のようなネーミングにしているそうです。「鮭 ひろし」という命名にもこうした意識が影響しているのでしょう。
ちなみに「ひろし」は発売前、「ひろこ」という名前に決まりかけていました。ところが直前になって社長が「ひろし」に改名。新宅さんによれば「原料の広島菜をより強調したかった」というのが理由だそうです。
ユニークなネーミングのきっかけを作った「ゆかり」は、発売後なかなか売れず返品の山となっていました。その当時のふりかけといえばカツオなどの動物性原料を使用したものが中心で、植物性原料である赤しそのみを使用した「ゆかり」はなじみがなかったためだといいます。その後、学校給食で採用されたことがきっかけで、子どもたちの間で人気となります。「あの赤いご飯を家でも作って!」という子どもたちの声から徐々に売れ始め、今では同社の看板商品となりました。
今後の商品展開について、新宅さんは「まずは納得のいく品質の高い良い商品を作ることに集中します。その後に消費者に楽しんでいただける商品名を考えていきたいと思っています」と話します。次なる商品の名前はどのようになるのか、注目です。
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