台風でも出社……テレワークできない企業が抱える3大リスク:働き方の見取り図(3/4 ページ)
コロナ禍を経て一度は根付いたテレワークだが、出社回帰が急速に進んでいる。ワークスタイル研究家の川上敬太郎氏は、テレワーク環境を整備していない企業が陥る3つのリスクを指摘する。
テレワークできない会社が抱える3つのリスク
他にも、カルチャーの醸成や一体感を高めるなど、生産性以外にも職場が出社回帰を決断する理由になり得る要素はいくつも考えられます。さまざまな理由からテレワーク実施率はピーク時から半減しているのです。
こうした中でとりわけ問題なのは、職場がテレワーク環境を整えていないために社員全員が出社回帰せざるを得ない会社が存在することです。その場合、テレワーク環境を整えている会社が出社回帰するのとは全く意味が異なります。
環境が整っていないために出社回帰せざるを得ない会社は、会社の存続に関わるリスクを抱えていることになるからです。コロナ禍を経て、新種のウイルス一つで事業を停止せざるを得ない可能性があることを世界の人々が体験しました。環境が整っている会社はそのリスクを回避できますが、整っていない会社はそのリスクを抱え続けなければなりません。
他にもテレワーク環境が整っていない会社が抱えているリスクが、少なくとも2つあります。1つは、社員を危険な目に合わせるリスクです。台風や地震などの災害で被害が発生した場合、テレワーク環境が整っていない会社が事業を継続させるには、社員の身を危険にさらして出社させることになります。
社員は会社にとって大切な財産です。テレワーク環境を整えていない会社は、災害時も社員を出社させ、ケガを負わせたり、場合によっては命を失いかねない危険な目にあわせるリスクを抱えていることになります。
もう1つはエンプロイメンタビリティ(employmentability:会社の雇用能力)が弱まるリスクです。いざというときにテレワークが選択できない職場がコロナ禍のような非常事態で事業が停止すると、会社は存続できなくなるかもしれません。それは社員からすると失業リスクが高いということです。
災害時に身の危険を冒して出社しなければならないことは職場の魅力を引き下げます。エンプロイメンタビリティを弱め、優秀な社員が離脱する可能性を引き上げます。人口が減少の一途をたどり、今後も慢性的に採用難が懸念される中、エンプロイメンタビリティが弱まれば会社の採用力低下にもつながり、将来性に大きな影を落とすことになります。
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