マネロン対策で重要な「KYC」 日本の銀行はどこまで遅れているか:フェナーゴ調べ
マネーロンダリングへの対策は世界的な急務だ。しかし、日本の金融機関のマネロン対策は遅れている。アイルランドのFintech企業フェナーゴは日本の金融機関の実態を調査した。
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日本のマネロン対策は遅れていて、デジタル化の波から取り残されている──このほどそんな実態が明らかになった。
マネー・ロンダリング(マネロン)とは、犯罪で得た収益を架空名義や他人名義の口座などを利用し、資金源の特定を困難にする違法行為だ。国連薬物犯罪事務所(UNODC)によると、世界におけるマネロンの総額は世界全体GDPの約2〜5%とされる。
ウクライナ侵攻をはじめテロや戦争などの脅威にさらされている中、マネロンやテロ資金供与の防止が世界中で進んでいる。
マネロン対策の重要な要素が「KYC」(Know Your Customer、顧客確認)だ。KYCとは、取引相手を把握し、不正な取引を防止するための顧客確認を意味する。
例えば銀行などの金融機関では、個人の顧客に対して身分証明書などの書類の提出を求め、本人確認を行う。法人顧客に対しては、事業や取引目的、株主構成や取引先などの情報を定期的に収集し、リスクが無いかを判断する一連の手続きを行う。
KYCは金融機関にとって法的な義務でもある。これを怠ると罰則が科され、さらには、企業ブランドの失墜、株価下落など、経営に深刻なダメージを与える。特に国際取引を行う銀行や証券会社は、変化する国際情勢に迅速に対応できるよう対策が求められる。
だが、日本は対策が遅れているようだ。アイルランドのFintech企業Fenergo(以下、フェナーゴ)が7月、「日本のKYC実態レポート2023 マネー・ローンダリングおよびテロ資金供与対策における金融DXの重要性」を公開した。
同調査は国際業務を行う銀行の経営層にオンラインアンケートを実施。マネロン対策の実態を明らかにした。調査対象国は米国、英国、オーストラリア、シンガポール、日本、香港、メキシコ。本稿では日本の有効回答151人から得られた結果をまとめ、主なポイントを解説する。
日本の金融機関のマネロン対策は不十分、KYCの手作業が負担
日本のマネロン対策は、21年に金融活動作業部会(FATF)による評価結果をまとめた第4次対日相互審査報告書の中で「重点フォローアップ国」とされ、改善の余地があると指摘を受けている。マネロン対策の強化は、日本の金融機関にとって急務だ。
しかし同調査によって、日本の金融機関でのKYCへの対応が、デジタル化の波から取り残されている現状が明らかになった。
特に、顧客の情報を一元的に把握し、そのリスクを特定・評価するために多くの時間と労力を費やしていることが分かった。
回答者全体の約半数がKYCチェックにおいて人手による作業が40%超であると回答している。また、8割超がKYCのために1000人を超える正社員を投入しており、新規取引開始時のKYCチェックに1カ月以上を要している。
KYCプロセスの効率化や自動化テクノロジーが解決のカギ
一方で金融機関のIT投資は、「金融犯罪リスク」対策の優先順位が3番目に高いことも分かった。KYCのための投資については、「人的リソース」よりも「自動化のための技術」への投資を優先している。
日本の金融機関はKYCおよびマネロン対策について課題はあるものの、デジタル化・自動化への投資を積極的に行っていることも分かった。
取引審査プロセスや継続的なモニタリングの自動化は、制裁措置や諸規制の変化に対応するための鍵だ。そのために、ITインフラの整備や新たなテクノロジーの活用が必要不可欠である。
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