中国が米テスラに“撤退圧力” 企業が再考すべき「チャイナリスク」とは:世界を読み解くニュース・サロン(1/5 ページ)
「処理水」海洋放出を決めたことで、中国から日本国内の各所に迷惑電話が多発し「中国リスク」というものが浮き彫りに。同様に中国では米テスラへの撤退圧力が強まっており、企業は中国との関係を再考する時期が来ている。
中国の「カントリーリスク」はとどまるところを知らない。直近では、2011年の東日本大震災によって起きた福島第一原子力発電所の事故を受けて、これまで蓄積されてきた冷却水(いわゆる処理水)の海洋放出が大変な物議になっている。8月24日から開始したALPS処理水の放出を受けて、中国政府は直ちに日本の水産物の輸入を全面禁止にした。また日本企業のボイコットもSNSで広がっており、これからさらに広がる可能性も指摘されている。
加えて、中国から大量の“電凸”が発生し、日本各地にその被害は及んだ。報道によれば、東京電力には6000件以上、東京都庁には3万件以上の迷惑電話がそれぞれ発生したという。もはやサイバー攻撃でいうなら「DDoS攻撃」のようなもので、威力業務妨害罪になる可能性がある。発信番号などを突き止めて、今後の入国者と照らし合わせて摘発する、といったところまで毅然と対応すれば日本政府も大したものだが、もちろんそんなことはできないだろう。
この騒動の前には、7月1日に中国で反スパイ法の改正法が施行されており、これまで以上に恣意的に中国当局が外国人を拘束できてしまうことになった。中国に進出している日本の企業関係者からは「中国には怖くてもう行けない」という悲鳴に近い声も聞こえている。
中国と深く関わること自体がリスクになりつつある昨今だが、これは何も日本だけの問題ではない。実は、これまで中国進出の成功例と見られていた、ある米大手企業も難しい現実に直面している。その企業とは電気自動車大手のテスラだ。
世界一の富豪で稀代のビジネスマンと評されるイーロン・マスクが率いるテスラも「中国リスク」を抱えているのである。そこで、テスラが置かれている状況を考察しつつ、日本企業がそこから何が学べるのか探ってみたい。
関連記事
- 中国製BEVは今後どうなるか 避けられない現実
深刻なバブル崩壊を迎えている中国では、2022年にBEVへの補助金が終了した。今後BEVを生産するメーカーの行方は。 - BEVが次世代車の“本流”にならない4つの理由 トヨタ「全方位戦略」で考える
トヨタが「ル・マン24時間」に、将来的に水素エンジン(内燃機関)車で参戦する方針を発表し、その試作車を公開。水素エンジン車の投入はトヨタの脱炭素戦略における水素エンジン開発の本気度を示している。 - トヨタが“あえて”「全方位戦略」を採る理由 「EV全面シフト」の欧米と一線
トップの座を豊田章男会長からバトンタッチを受けた佐藤恒治社長自身がBEV強化とともに、前社長の「全方位戦略」を踏襲する方針を明言した。欧米勢が「EV全面シフト」を採る中、トヨタの真意を解説する。 - トヨタがEV普及で抱える最大の弱点とは? “EV戦略見直し”報道で考える各社の現在地
トヨタがEV戦略を見直すとの報道が出ている。トヨタの弱点を考察する。 - 「急速充電でバッテリー故障」投稿に反響 BEVの正しい充電方法とは? 日産広報に聞いた
電気自動車(EV)を急速充電しすぎたらバッテリーが故障したとする投稿がTwitterで注目を集めている。日産自動車広報にEVの適切な充電方法などを聞いた。 - 「世界はなぜEV一択なのか」 トヨタ社長に“直球質問”してみた 【回答全文あり】
国内外でガソリン車から電気自動車(バッテリー式電気自動車、BEV)にシフトする動きが進む中、人々に「次世代自動車=EV」という認識が浸透しつつあるように感じる。豊田章男社長に「世界はなぜEV一択なのか」と直球質問した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.