中国が米テスラに“撤退圧力” 企業が再考すべき「チャイナリスク」とは:世界を読み解くニュース・サロン(2/5 ページ)
「処理水」海洋放出を決めたことで、中国から日本国内の各所に迷惑電話が多発し「中国リスク」というものが浮き彫りに。同様に中国では米テスラへの撤退圧力が強まっており、企業は中国との関係を再考する時期が来ている。
“蜜月関係”10年 中国は特別厚遇で誘致
テスラと中国の関係が始まったのは、テスラを中国で販売し始めた2014年にまでさかのぼる。18年にはテスラは3つ目となる大規模工場「ギガファクトリー」を初めて海外で作ることになり、その場所に選ばれたのが中国の上海だった。アメリカ以外の海外で初のギガファクトリーとなった。
これを誘致するのに、中国はテスラには特別な厚遇条件を許した。それまでは外国資本の自動車メーカーは、中国企業と合同会社を作る必要があった。そんな条件でも中国進出する企業が後を絶たなかったのは、その市場規模と、賃金の安さなどの魅力があったからだ。さらに、中国国内で生産して販売すると、本来なら中国市場に自動車を輸入する場合に必要となる25%の自動車税は必要なくなる。
ところがテスラはそれまでの外国資本企業とは一線を画し、外国自動車メーカーとして史上初めて地元企業と合弁をせず事業を行っていいという異例の待遇で上海に上陸した(22年1月から自動車メーカーへの合弁会社ルールは撤廃された)。これに加え、上海当局は、テスラの現地法人に対して、通常の25%ではなく15%に優遇した法人税率を認めている。
厚遇の引き換えは部品の現地調達
一方で、中国側は、部品などのサプライヤーは中国企業にすることを確認している。これはテスラにとってもコストカットができるため、お互いウィンウィンというわけだが、テスラの技術が盗まれる可能性が高かった。
テスラの幹部は22年、中国系のSNS「微博」(ウェイボ)への投稿で、テスラのサプライヤーは95%が中国企業になったと明らかにしている。つまり、テスラが調達している部品の95%が中国の現地調達だということだ。
ただ中国企業にはテスラ側から技術や品質管理などで管理が必要になる。中国企業はそうしたテスラのノウハウだけでなく、技術力も手に入れることができたはずだ。そして、4年ほどが経った今、中国のサプライヤー企業も成長し、その技術を中国メーカーに「移転」することもできるようになった。
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