相次ぐ“ジャニーズ離れ” 起死回生のために「企業としてすべきこと」(1/4 ページ)
性加害問題を認めたジャニーズ事務所。これにより、大手企業を中心にジャニーズ所属タレントを起用した広告の中止や更新見送りが相次いでいる。「タレントに罪はない」ものの、なぜこのような対応が相次ぐのか。ジャニーズ事務所がとるべき対応や、これまで事務所にお世話になってきた広告主の企業ができる対応とは何か。危機管理に詳しい新田龍氏が解説する。
ジャニーズ事務所の元社長、故ジャニー喜多川氏(2019年没)による性加害問題を同事務所が認めた記者会見から、9月21日で2週間が経過した。
本年5月に事務所が声明発表した際は「事実確認できない」「知らなかった」と否認していた性加害問題について、今般の会見では一転、事実認定と謝罪をして、被害者に対して補償と救済をすると表明した。
また藤島ジュリー氏は社長を退任し、新社長として東山紀之氏が就任することも発表。翌日のメディアには、会見で東山氏が語った「人類史上もっとも愚かな事件」「鬼畜の所業」といった見出しが並び、事務所が改心したかのような姿勢に対して好意的な報道が多く見られた。また一部のテレビ局は率先して「これまでと変わらず、引き続きジャニーズ事務所のタレントを番組に出演させていく」との意向を表明していた。
それから2週間。事務所に忖度(そんたく)の意を示すメディア各社の前のめりな姿勢とは裏腹に、グローバル大手企業を中心に、広告主となる各社がジャニーズ事務所と距離を置き、所属タレントを起用した広告や販促を中止したり、契約更改をしなかったり、今後も起用を見送ったりする「ジャニーズ離れ」の動きが広がっている。
一連の動きを巡っては「未成年への性的虐待という重大な人権侵害を犯した事務所と取引関係を続けるということは、人権侵害に加担するようなもの。契約は解消して当然だ」との意見が多くみられる。
一方で「あくまで事務所の経営者であった加害者個人の問題であり、所属タレントには全く非がないどころか、むしろ彼らは被害者。いきなり世間から袋叩きにされ、一瞬で仕事を干されてしまう今の状況こそ人権侵害だ」との意見もあり、世論は入り乱れているようだ。
読者諸氏にもさまざまな考えがおありだろうが、今回は炎上トラブル解決と企業リスクマネジメントの専門家の観点から、下記の項目に分けて解説していきたい。
ジャニーズ事務所の対応における問題点
ジャニー氏の性加害疑惑に関して、初めてジャニーズ事務所が公式声明を発表したのは先述のとおり本年5月のこと。その際の内容は危機管理広報として実にお粗末なレベルで、責任回避の姿勢と、できる限り穏便にやり過ごしたいという意図からにじみ出た隠蔽体質が感じられるひどい内容であった。詳細は当時の筆者の記事でも解説している(参照:「ジャニーズ事務所、企業としての「5つの問題点」とは? 炎上対応の専門家が解説」)。
当該記事内で筆者は「ジャニーズ事務所も例外ではなく、昨今の人権問題への関心の高まりから『未成年への性加害疑惑がある芸能事務所のタレントを起用するのか?』とスポンサー企業に問い合わせが殺到する可能性は充分ある」「辟易(へきえき)した企業は、いずれ『面倒なジャニーズタレントとは契約しない』と判断し、事務所にとっては大きな痛手となるはずだ」とコメントしていたが、今般まさにその予想通りの展開となっているわけだ。
そして今般、9月に開かれた記者会見は4時間超にもおよんだ。そもそも組織が謝罪会見を開く目的は、自組織の不祥事によって関係者に迷惑をかけ、世の中を騒がせてしまったことに対するお詫びと反省の意を伝え、不祥事を起こした根本原因を解消・改善する姿勢を示し、自組織への早期の信頼回復につなげることにある。結果として、世論が味方についてくれるか、少なくとも敵には回らない形になればまずは成功といえよう。
それを踏まえて、今般の事務所の会見を振り返ってみよう。まず、事務所が性加害にまつわる事実認定と謝罪をし、過去との決別をアピールし、被害者への補償と救済を表明した点においては、以前よりも一歩前進した部分であり、一定の評価ができるところだ。
メディア各社はそれで納得し、ジャニーズタレント継続起用を表明したのかもしれない。しかし、事務所タレントと広告契約を結んでいるスポンサー企業各社にとっては「法人組織としてのジャニーズ事務所は、結局何も変わっておらず、対応が不十分」と映ったのではなかろうか。
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