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男女の賃金格差、なぜ埋まらない? 「仕方ない」論が見落とす2つの視点(2/3 ページ)
女性は男性よりも平均30.4%賃金が低い――。 格差を「仕方ない」とする人が見落とす2つの視点とは?
働き方改革も格差の要因に
20年前には顕在化していなかった要因もある。働く女性の増加、非正規雇用者の増加、働き方改革の進展だ。
この10年、コロナ禍の20年を除いて働く女性の数は増加している。15〜64歳の女性の就業率は、05年の58.1%から22年の72.4%へと伸び、男性の84.2%に迫る勢いだ。
しかし、大きく増えたのはパートタイムや派遣などいわゆる非正規労働の女性である。日本では、正社員に比べて非正規社員の基本給や手当が低く抑えられているから、女性の平均賃金を大きく引き下げているとみられる。
正社員として働いている場合にも、家事育児との両立のために男性よりも短い時間で働くケースが多い。両立支援、子育て支援という形で育休や時短勤務の制度が導入されるようになった90年代は、「それは女性が使うものだ」という暗黙の了解があった。その後「働き方改革」の時代になると、エリア限定社員や短時間・短日勤務の社員など「多様な正社員」制度の導入も進んだ。
これらの働き方は、建前上は男性も選択できるものだ。しかし実際は、圧倒的に女性の利用が多い。制度の導入が進んだおかげで子育てや介護をしながらでも働けるようになったのだが、男女の賃金格差の拡大要因にもなっているのだ。
また、こういった制度を利用しながら働くことは、昇進のスピードをダウンさせることになる。スピードダウンどころか、実質的にストップさせられる企業も少なくない。最初に挙げた「役職の差」が賃金の格差の要因だ、という話に戻ってくるのだ。
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