年末年始、なぜ「のぞみ」を全席指定にするのか 増収より大切な意味:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(5/6 ページ)
JR東海とJR西日本が、ゴールデンウィーク、お盆休み、年末年始の3大ピーク時に「のぞみ」を全列車指定席にすると発表した。利用者には実質的な値上げだが、JR3社は減収かもしれない。なぜこうなったのか。営業戦略上の意味について考察する。
割引制度「EXサービス」値上げで、救済措置も「焼け石に水」だが……
もう1つの理由は「EXサービス」の推進だ。東海道新幹線の会員制予約サービスとして始まり、列車が直通する山陽新幹線、九州新幹線へ利用範囲を拡大してきた。ただし西九州新幹線は線路がつながっていないので対象外だ。
EXサービスは2種類あって、「EX予約」はクレジットカードと年会費1100円が必要。ただし、規定として割引運賃となっており、東京〜新大阪を往復すれば年会費の元は取れる。早期購入割引も設定されている。乗車変更は乗りたい列車の5分前まで何度でも無料だ。紙のきっぷは1回だけ無料で変更でき、2回目からは手数料を払って払い戻して買い直しとなる。
「スマートEX」はクレジットカードが必要だが年会費は不要。早期購入割引もあるし、乗車変更回数の制限もない。ただし割引率は下がる。年会費のモトを取る自信がなければ「スマートEX」で十分だ。私も「スマートEX」を利用している。
東京〜新大阪間の正規運賃は前出の通り1万5120円だ。「EX割引」は繁忙期、最繁忙期の加算はない。通年で1万4230円だ。つまり年末年始は980円の割引となる。正規運賃の自由席は1万3780円だから、いままで自由席を愛好してきた人は450円高くなる。「スマートEX」の東京〜新大阪間は1万4520円。こちらは繁忙期に200円が加算されるから1万4720円になる。指定席より400円安く、自由席より940円高い。
EXサービスは9月30日に価格改定が行われて、割引率が低くなった。上記は値上げ後の比較だ。いままでは指定席でも正規の自由席料金よりも安い区間も多かった。EXサービスにも自由席料金が設定されており、自由席同士の比較だとEXサービスの方が安い。ただし今年の年末年始から自由席特急料金では「のぞみ」には乗れない。
「スマートEX」と「エクスプレス予約」の比較表。同行者がいる場合は、駅で発券するか、同行者ぶんの座席に同行者の交通系ICカード番号を登録する。子どもを連れて行く場合は「こども用交通系ICカード」を用意しよう(出典:JR東海、「スマートEX」と「エクスプレス予約」のサービス比較)
関連記事
- 次の「新幹線」はどこか 計画をまとめると“本命”が見えてきた?
西九州新幹線開業、北陸新幹線敦賀延伸の開業時期が近づいている。そこで今回は、新幹線基本計画路線の現在の動きをまとめてみた。新幹線の構想は各県にあるが、計画は「建設を開始すべき新幹線鉄道の路線を定める基本計画」として告示されている。これと費用便益比、各地のロビー活動の現状などから、今後を占ってみたい。 - なぜ駅名に「新」が付くの? 新横浜、新大阪、新神戸など
新幹線だけでなく、在来線や私鉄にも「新」が付く駅名は多い。中には意外な場所にも新が付く駅はある。なぜそれらの駅には新が付くのか。 - ドラえもんがつくった地下鉄は公共交通か? ローカル線問題を考える
『ドラえもん』に「地下鉄を作っちゃえ」という話がある。のび太がパパのためにつくった地下鉄は公共交通と認められるか。この話をもとに、公共交通になるための過程、利用者減少から撤退への道のりを考えてみたい。 - 東海道新幹線の運休で大混乱、JR東海の対処は適切だったか
6月2日の午後から3日の午前、東海道新幹線が運休となった。3日午前中には、筆者が予約した「のぞみ25号」があったが、みどりの窓口できっぷを買っていたことが後の後悔につながる。最終的には5時間遅れて出雲市に到着したが、今回の体験と、JR東海の対処、乗客がすべき対応などを紹介したい。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.