最低賃金1500円に上げれば解決? “そこじゃない感”が拭い切れないワケ:働き方の見取り図(3/4 ページ)
非正規雇用者が抱える課題は、最低賃金さえ上げれば解決するというものではない――。非正規雇用を形成している各雇用形態の課題とは、どのようなものがあるのか。
非正規雇用者がその働き方を選んだ理由
また、雇用形態ごとに、その働き方を選んでいる理由もさまざまです。労働力調査の23年4〜6月平均をもとに、現職の雇用形態に就いている主な理由についてグラフで見てみましょう。
パートの場合「自分の都合のよい時間に働きたいから」という回答比率がアルバイトに次いで多い36%。「家計の補助・学費などを得たいから」(23%)と「家事・育児・介護などと両立しやすいから」(18%)は非正規雇用の中で一番多くなっています。
家事や育児、介護などと両立させながら家計補助的に働くために、できる限り時間の融通を利かせたいという、多くの主婦層が抱える事情を色濃く反映しているようです。
一方で「正規の職員・従業員の仕事がないから」と回答した比率は6%と、非正規雇用全体の中で最少となっています。パート層は、正規雇用を目指す人より、家庭と家計補助のバランスを取りながら柔軟に働くといった、複数の条件を同時に満たす働き方を求める人が多い傾向にあるようです。
アルバイトの場合は「自分の都合のよい時間に働きたいから」が53%と過半数に達し、非正規雇用の中でも突出しています。学生が多いと考えられるため、できる限り仕事に縛られず学業などを優先できる働き方を求めている人が多いようです。
それに対し、派遣社員の場合は「自分の都合のよい時間に働きたいから」の比率がアルバイト、パートに次いで高い28%である一方、「正規の職員・従業員の仕事がないから」の比率も26%と非正規雇用の中でトップです。時間の融通を利かせて派遣社員として働きつつ、並行して就職活動を行うなど、正規雇用につながる道を探っている人が一定数いることがうかがえます。
また、契約社員も派遣社員に次いで「正規の職員・従業員の仕事がないから」の比率が21%と高く、他の非正規雇用と比べると突出しています。一方で、シニア層が多い嘱託は「専門的な技能などをいかせるから」が28%と非正規雇用の中で突出して高くなっています。長い実務経験の中で培ってきた技能や経験を生かして働きたいと考えている傾向がうかがえます。
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